「インソールを入れたのに膝が痛い」には理由があった

歩行

〜靴の中敷きが「効く人・効かない人」の違いを科学的に解明〜

こんな経験はありませんか?

膝の痛みに悩む方の多くが、病院や整骨院で「インソール(中敷き)を使ってみましょう」と勧められた経験をお持ちではないでしょうか。

でも、実際に使ってみると…

・ 「あまり変わらない気がする」

・ 「むしろ痛くなったかも?」

・ 「入れているうちに違和感が出てきた」

こんな声はよく聞かれます。実は、これには科学的な根拠があります。最新の研究で「インソールの効果には、足首の動きが深く関わっている」ということがわかってきました。

変形性膝関節症と「膝の内側への負担」

膝の内側がすり減りやすい理由

膝関節は大きく「内側」と「外側」の2つの区画に分かれています。歩くとき、膝にかかる荷重の約60〜80%は内側区画に集中します。歩行時には膝の内側に負担が集中しやすく、結果として内側の関節がすり減りやすくなります。

歩くたびに膝の内側へかかる「ひねるような力」(専門的には「外部膝外転モーメント」と呼びます)が大きいほど、痛みが強くなりやすく、関節の変形も進みやすいとされています。

インソールはどうやって膝を守るの?

「ラテラルウェッジインソール」と呼ばれる外側が高くなったインソールは、靴の中で足の裏の重心(荷重中心)を外側にずらすことで、膝の内側にかかる力を軽くしようという発想のアイテムです。

理屈のうえでは理にかなっています。しかし実際には…

研究でわかった「3人に1人は膝の内側への負担が増える方向に変化した」という事実

イギリスのマンチェスター大学などの研究グループが、内側型膝OAの患者70名を対象に調査を行いました。ラテラルウェッジインソールを使ったときの膝の負担を、精密な動作解析で計測した研究です。

結果は驚くべきものでした。

インソールを入れたときの膝の変化
✅ 約3分の2(67%)の患者:膝の内側への負担が平均11%ほど軽くなった
❌ 約3分の1(33%)の患者:膝の内側への負担がむしろ8%増えてしまった

つまり、同じインソールを使っても、「効く人」と「逆効果になる人」がほぼ2対1の割合で存在したのです。これは、ラテラルウェッジインソールの臨床試験で「痛みへの効果が一貫しない」という結果が多い理由のひとつだと考えられています。

「効く人・効かない人」の違いは足首にあった

足首が外側に倒れやすい人ほど、インソールが効く

研究者たちはさらに「インソールを使う前の足首の状態」を分析しました。その結果、インソールを使ったときに膝の負担が軽くなりやすい人には、ある共通点があったのです。

インソールが効きやすい人の特徴
▶ 歩くときに足首が自然と外側に倒れやすい(外反しやすい)
▶ 距骨下関節(かかとの下の関節)の動きが柔らかい
※ 逆に、足首が硬くて内側に傾いた状態の人は効果が出にくい傾向があった

なぜ足首が関係するの?

インソールが膝を守る仕組みは、次のような流れです。

・ 外側が高いインソールを入れる

・ → 足の裏の重心が外側にずれる

・ → そのとき、かかとの骨が外側に倒れる(外反する)動きが起きる

・ → その動きが膝関節への力の伝わり方を変えて、膝内側の負担を減らす

この流れが起きるためには、かかとの関節(距骨下関節)が外側にしっかり動ける柔軟性が必要です。足首が硬くて動きにくい人は、インソールを入れても重心が外側にずれず、膝への効果が生まれにくいのです。

靴底の傾きと足圧の関係:スタンフォード大学の研究から

アメリカのスタンフォード大学の研究グループは「靴底の傾き(バルガス設計)を変えたとき、足の裏の圧力分布から膝への負担の変化を予測できるか」を調べました。

靴底の傾きを4度・8度と段階的に変え、足の裏の内側と外側にかかる力の比率を測定して、膝への影響と照らし合わせたのです。

靴底の傾きと予測精度
傾き4度(やや外傾き):足圧から膝の変化を予測できる割合 → 平均71%
傾き8度(より強い外傾き):足圧から膝の変化を予測できる割合 → 平均95%
※ 強い介入ほど、足圧の変化が膝への影響をほぼそのまま反映した

この研究からわかるのは、「靴や中敷きの調整が大きいほど足圧の変化が膝に直結するが、調整が小さいほど個人差の影響が大きくなる」ということです。

少し調整した程度では人によって反応が全く違う。だからこそ、どんな介入が自分に合っているかを個別に見極めることが大切なのです。

では、どうすればいいの?

インソールや靴を変える前に「足首の状態」を確認する

膝の痛みに対して靴や中敷きで対応する場合、まず足首・距骨下関節の動きを確認することがとても重要です。リハビリの専門家や鍼灸師がいれば、次のような評価ができます。

専門家に診てもらうポイント
✔ かかとの骨が外側に倒れやすいか(距骨下関節の外反可動域)
✔ 立ったときの足の形(内側に傾いている?外側に傾いている?)
✔ 歩くときの重心の移り方(内側に乗りすぎていないか)
✔ インソール使用前後で歩き方が変化しているか

足首の硬さを改善するアプローチ

もし足首が硬くてインソールの効果が出にくい状態であれば、足首・足部への直接的なアプローチが有効です。

・ ふくらはぎ・アキレス腱のストレッチ(距骨下関節の動きをよくする)

・ 足関節まわりのほぐし(鍼灸:三陰交・崑崙・照海などへの施術)

・ 足首・かかとの関節モビライゼーション(理学療法)

・ 足の裏の筋肉(足底筋)を活性化するエクササイズ

足首の柔軟性が高まることで、インソールや靴調整の効果がより引き出されやすくなる可能性があります。

まとめ

・ 膝OAでは歩くたびに膝の内側に大きな負担がかかる

・ ラテラルウェッジインソールは膝内側の負担を軽くする手段のひとつ

・ ただし、3人に1人はインソールで逆に膝への負担が増えてしまう

・ 足首(距骨下関節)の柔軟性が高い人ほどインソールの効果が出やすい

・ 足首の硬い人は、まず足首の動きをよくすることがインソール活用の近道

・ 靴・インソールの効果には個人差があるため、専門家による評価が重要

ご自宅でのリハビリ・鍼灸についてのお問い合わせ:riharin.kk@gmail.com / pacupuntura.com

コメント

タイトルとURLをコピーしました