〜脊髄CPGのはたらきをリハビリに活かす〜
脳卒中のリハビリで歩行練習をしていると、「もっと自然にスムーズに歩けるようになりたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。
実は、私たちの背骨(脊髄)の中には、脳からの命令がなくても自動的に「歩くリズム」を作り出す仕組みが備わっています。これを上手に活用することが、歩行の回復を大きく左右します。
今回は、その仕組みである「CPG(シーピージー)」について、わかりやすくご説明します。
CPGって何? 歩くリズムをつくる「脊髄のスイッチ」
CPG(中枢パターン生成器)とは、脊髄の中にある神経の回路網で、脳から「歩け」という命令がなくても、足への刺激に反応して自動的に「歩くリズム」を生み出すことができる仕組みです。
たとえるなら、自転車のペダルを一度こぎ始めると、あとは自然とリズムに乗れるような感覚です。CPGはそのリズムをつくる「エンジン」のようなものです。
このCPGは、脳卒中後も脊髄の中に残っています。上手に刺激してあげることで、「自動的に歩くリズム」が戻ってくる可能性があります。
CPGを動かすための「2つの鍵」
CPGは、ただ待っているだけでは働きません。次の2つの刺激が鍵になります。
体重をしっかりかけること(荷重)
足の裏や脚に体重が乗ると、脊髄に「立って歩いているよ」という信号が伝わります。これがCPGを目覚めさせる大切なスイッチです。
股関節をリズムよく動かすこと
股関節が後ろに引かれると(脚を後ろに伸ばすと)、次の一歩を踏み出す準備信号が自動的に作られます。これがリズミカルな歩行につながります。
この2つが揃うことで、CPGが活発に働き、歩くために必要な筋肉がリズムよく動き始めます。
「立っているだけ」では歩行回復に不十分な理由
リハビリでよく行う「立位練習」や「左右への重心移動」は、バランスを整えるうえでは大切です。しかし、「歩行を回復させる」という目的では、それだけでは足りないことがわかっています。
積極的な歩行練習 体重をかけながら股関節を動かすことで、歩行に同期した筋活動が明確に出てきます。
つまり、「歩くための練習」は、実際に「歩く動作」に近い形で行うことがとても重要なのです。
装具を使って、早期から「歩く練習」を始める
麻痺が強くて、自分では膝が折れてしまう場合はどうすればよいでしょうか?
そのような場合は、長下肢装具(KAFO:膝から足首まで支えてくれる装具)などを使って膝を安定させながら、早期から「交互に足を出す」歩行練習を行うことが推奨されています。
装具は「歩けないから使う補助具」ではなく、「CPGを活性化させ、脳と脊髄に正しい歩き方を学習させるための道具」として活用できます。
補装具によって体重が足にしっかりかかり、股関節も動くようになることで、CPGが働きやすい環境を整えることができます。
まとめ:歩行は、歩くことで回復する
「歩行は、歩くことでしか再建できない」という言葉があります。CPGのしくみを理解すると、その意味がよくわかります。
歩行回復のポイント
- 脊髄のCPGは、適切な刺激があれば今でも活性化できます
- 「荷重」と「股関節の動き」が2大スイッチです
- 立っているだけでなく、実際に歩く練習を積み重ねることが大切です
- 装具を上手に使って、早期から歩行練習を始めることが回復の近道です
私たちセラピストは、足から脊髄・脳への刺激をデザインすることで、あなたの体の持つ「回復する力」を最大限に引き出すサポートをします。
「もう少し自然に歩けるようになりたい」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。


コメント