── 最新システマティックレビューが出した冷静な結論
「腰痛の原因は姿勢の歪みです」
この言葉、あまりにも聞き慣れすぎている。
左右の肩の高さ、骨盤の傾き、体幹のズレ。
臨床現場では、姿勢の左右差=腰痛の原因として説明されることが少なくありません。
しかし本当にそうなのか?
この問いに対して、2024年にかなり冷静な答えを出した論文があります。
今回紹介する論文
Postural asymmetry in low back pain
― 観察研究のシステマティックレビューとメタ解析
(Disability and Rehabilitation, 2024)
この論文は
✔ 腰痛がある人は
✔ 本当に姿勢が左右非対称なのか
を、複数の研究を統合して検証しています。
この研究の立ち位置(重要)
まず大前提。
この論文は
❌「歪みを直したら腰痛が治る」
❌「この姿勢が腰痛の原因だ」
そういう話ではありません。
あくまで、
腰痛のある人は、健常者と比べて
姿勢の左右差を示す傾向があるのか?
を調べた研究です。
つまり
👉 原因か結果かは決めていない
👉 治療効果も検証していない
ここを勘違いすると、読み間違えます。
研究方法をざっくり言うと
- 対象:主に非特異的慢性腰痛
- 比較:腰痛あり vs 健常者
- 本研究では、計46研究・12,071人がレビュー対象となり、
- うち36研究・約7,940人がメタ解析に含まれた。
- 評価内容:
- 体幹・骨盤・脊柱の左右差
- 姿勢アライメント
- 筋活動・筋量の左右差 など
- 測定方法:
- 写真解析
- モーションキャプチャ
- EMG
- 超音波・画像評価
一言で言うと、
姿勢に関する左右差を測っている研究を全部集めた。
結果:姿勢の左右差はあるのか?
結論を一文で言うと
腰痛のある人は、健常者よりも
姿勢の左右非対称性を示す傾向はある
ただし──
その傾向は一貫しておらず、決定打にはならない
ここがミソ。
なぜ結論が弱いのか?
理由はシンプル。
① 研究ごとに測り方が違いすぎる
- どこを「左右差」とするのか
- 静止姿勢なのか、動作中なのか
- 筋なのか、骨なのか
バラバラ。
② 効果の方向が一致しない
- 右が高い人もいれば左が高い人もいる
- 側屈が強い人も、そうでない人もいる
つまり
👉 「腰痛者に共通する歪みの型」は見つからない
臨床家が一番勘違いしやすいポイント
ここはハッキリ言います。
❌ 姿勢に左右差がある
=
❌ それが腰痛の原因
ではありません。
この論文が示しているのは、
姿勢の左右差は
腰痛の「原因」ではなく
「結果」や「適応」の可能性も高い
という立場です。
じゃあ、姿勢評価は無意味なのか?
答えは NO。
ただし使い方を間違えると危険。
正しい使い方
- 姿勢の左右差を
👉 動作・負荷・痛みとセットで見る - 「歪みがある」では終わらせない
- なぜその姿勢を取っているのかを考える
危険な使い方
- 姿勢だけで原因を断定
- 「歪んでるから治らない」と不安を煽る
- 左右差をゼロにすることがゴール
これはエビデンス的に弱い。
リハビリ・鍼灸の視点で考えると
姿勢の左右差は、
- 痛み回避行動
- 感覚入力の偏り
- 筋緊張や自律神経の左右差
- 運動学習のクセ
こうした神経系・感覚系の結果として現れることが多い。
だからこそ、
- 動作の再学習
- 感覚入力の調整
- 負荷のかけ方の最適化
ここにアプローチする価値がある。
「歪みを直す」のではなく、
「使い方を変える」。
この論文から得られる一番大事なメッセージ
姿勢の左右差を、
神様のように扱うな
姿勢は
✔ ヒントにはなる
✔ だが答えではない
腰痛は、もっと複雑。
まとめ
- 腰痛者に姿勢の左右差は見られることがある
- しかし
共通パターンは存在しない - 姿勢の左右差だけで
原因も治療方針も決めるのは危険 - 評価は
動作・負荷・痛みとセットで
派手な結論はない。
だが、臨床を冷静にしてくれる良論文です。


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