立っているだけで身体は変わる。

姿勢

──立位姿勢の違いが体幹・股関節筋活動に与える影響**

📄 引用研究:藤谷ら(2017)
「立位姿勢の偏りが体幹および股関節筋活動に及ぼす影響」
29_jpts-2017-148


■「姿勢が悪い」は抽象的すぎる。問題は“どの姿勢か”だ。

臨床現場で患者からよく聞く言葉――

  • 「立ってると腰が重くなる」
  • 「姿勢が悪いって言われる」
  • 「反り腰か猫背か分からない」

だが、姿勢は良い・悪いでは語れない。
どのタイプの立位かによって筋活動が全く変わる。
そして、その違いが痛み・疲労・筋機能低下につながる。

藤谷ら(2017)の研究は、まさにこの疑問にデータで答えている。
本研究では、17名の健常成人に以下の3種類の立位を行わせ、筋電図(EMG)で測定した。


🔹研究で定義された3つの立位姿勢

姿勢タイプ定義(研究内での基準)特徴
中間位(Neutral)骨盤・脊柱・体幹が自然な位置理想に近い立位
スウェイバック(Sway-back)胸椎後弯↑、骨盤後傾↑、体幹後方シフトよく見る「ダラッと立つ姿勢」
反り腰(Lordosis)腰椎前弯↑、骨盤前傾↑、体幹前傾若年女性やアスリートに多い

■結論:姿勢の違いで、筋活動パターンは「まったく異なる」

スウェイバック姿勢で起きていたこと

増える筋減る筋
腹直筋内腹斜筋
腸腰筋・大殿筋(上部・下部)

つまり:

「腹直筋だけ無駄に働き、股関節屈筋や殿筋はサボる姿勢」

ここで重要なのは、腹直筋が強いというより、
他の筋が働かなくても姿勢が成立してしまう=“受動的な立ち方”になっている点。

研究内でも指摘されている👇

スウェイバックは筋活動ではなく骨格的支持に依存している。

つまり“ラクに立っている”のではなく、
筋の能力を使わず立ってしまう癖がつく

このタイプは臨床でこう訴えやすい👇

  • 長時間立つと腰が痛い
  • 立位で疲れやすい
  • 股関節まわりの筋力が戻りにくい

反り腰姿勢で起きていたこと

増える筋減る筋
胸椎部・腰部の脊柱起立筋、多裂筋大殿筋下部

要するに:

「腰の伸展筋が過活動し、大殿筋が使われない。」

これは臨床的に非常に重要。

大殿筋が働かない → 腰で頑張る

腰椎前弯がさらに強まる

腰部伸展筋が張り続ける

慢性的な腰部疲労・神経感作へ

まさに反り腰 × 腰痛の悪循環モデルそのもの。


■研究解釈:姿勢は筋力不足ではなく“運動戦略の偏り”

この研究の本質はここ👇

姿勢が変わると、筋の使われ方が変わる。
つまり筋機能は「強さ」ではなく「姿勢制御」に依存している。

✔ スウェイバック → 制御放棄型
✔ 反り腰 → 過活動代償型

だからリハビリはこう考える必要がある👇

悪い姿勢 → 痛み → 筋力不足 → トレーニング
ではなく
姿勢戦略の崩壊 → 過不足のある筋活動 → 痛み・疲労

■臨床への応用:姿勢別の介入戦略

スウェイバック患者には

すべきこと理由
股関節屈筋(腸腰筋)と大殿筋の再活性筋活動が低下しているため
内腹斜筋・腹横筋の意識づけ腹直筋優位を修正
壁立位・骨盤軽度前傾→荷重再教育骨格支持依存から脱却

🔹言い換えると:
「休んでいる筋を起こす」介入


反り腰患者には

すべきこと理由
脊柱起立筋・多裂筋の過活動の抑制EMGで有意に増えているため
大殿筋下部の再教育(ヒップヒンジ)股関節伸展負荷を戻す
呼吸×腹圧戦略の再構築腰椎前弯と代償制御の改善

🔹言い換えると:
「使いすぎている筋のブレーキと代役筋の再配置」


■この研究が教えてくれる臨床的メッセージ

✔ 姿勢の違いは筋の強さの差ではない
✔ 身体が“どの筋を使って立つか”という運動選択
✔ 長時間立位が疲れるのは“弱いから”ではなく誤った戦略
✔ 姿勢改善=筋トレではない
姿勢=制御システム


■まとめ

藤谷らの研究は、たった1つの事実を裏付けている。

立ち方が変われば、使う筋肉が変わる。
使う筋肉が変われば、身体の使われ方も変わる。

つまり、姿勢は形ではなく習慣化した神経運動戦略

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