脳卒中の歩き方

リハビリ

歩幅より
大事なもの

脳卒中のリハビリをしていると、「左右の歩幅をそろえましょう」と言われた経験がある方もいるかもしれません。確かに、歩幅が左右均等な歩き方は「きれいな歩き方」に見えます。でも実は、歩幅をそろえることがリハビリの最優先ゴールとは限らない、ということが研究によって明らかになってきています。

今回は、「歩幅の左右差(非対称性)」をテーマに、脳卒中後の歩行リハビリで本当に大切なことをわかりやすくお伝えします。


歩幅がそろっても、「楽に歩ける」とは限らない

歩幅の非対称性を改善するために、鏡や画面を使った視覚フィードバックのトレーニングが行われることがあります。確かにこのトレーニングで歩幅の左右差は小さくなります。

しかし研究では、歩幅がそろっても歩く際に使うエネルギー量はほとんど変わらなかったという結果が報告されています。

つまり、「見た目はきれいになっても、体への負担が減ったわけではない」ということ。見た目の対称性と、実際の歩きやすさは必ずしも一致しないのです。


体が「あえて」非対称に歩いている理由

「それなら、なぜ非対称に歩くの?」と思う方もいるでしょう。

実は、脳卒中後に歩幅が左右で違って見えても、体の内側では「なるべく左右均等に歩こうとして」あえて非対称な動きを選んでいる場合があることがわかっています。

少しわかりにくいかもしれませんが、たとえるなら「右に傾いた天秤を水平に保つために、あえて左に重りを置く」ようなイメージです。外から見ると左に偏っているように見えても、体全体ではバランスをとっているわけです。

この場合、無理に歩幅だけをそろえようとすると、体にとってかえって不自然で疲れやすい歩き方になってしまう可能性があります。


歩行能力を高めるカギは「麻痺側で地面を蹴る力」

では、リハビリで本当に重要なのは何でしょうか?

研究が示すのは、「麻痺側の足で地面を蹴り出す力(プロパルジョン)」です。

歩行能力が高い方ほど、麻痺のある側の足でしっかり地面を後ろに蹴り出す力が強い傾向があります。この「蹴り出し」には、特に足首の動き(プッシュオフ)が深く関わっています。

歩幅が左右でそろっているかどうかよりも、「麻痺側の足で地面をどれだけ蹴り出せるか」の方が、実用的な歩行能力の改善につながるのです。


リハビリで見てほしいのは「その人に合った歩き方」

歩幅を均等にすること自体が間違いというわけではありません。ただ、それをリハビリの唯一の目標にするのはリスクがあります。

大切なのは、一人ひとりの身体の状態に合わせて

  • 最も効率よく歩けるパターンを見つけること
  • 麻痺側の足の蹴り出す力を少しずつ引き出すこと

この2つを軸にリハビリを進めることが、日常生活の中での歩行能力の向上につながります。


まとめ

よくある誤解実際のポイント
歩幅を左右そろえることが目標歩幅がそろっても歩行効率は改善しないことも
非対称な歩き方は「悪い歩き方」体がバランスをとるためにあえて非対称に歩くことがある
見た目がきれいな歩き方がよい麻痺側で地面を蹴る力が歩行能力の鍵

脳卒中後の歩行リハビリは、「見た目」だけでなく「体への負担」や「実用的な歩行能力」を総合的に見ながら進めることが重要です。

「うちの家族の歩き方、左右でバランスが違う気がする…」と気になっている方は、ぜひ担当のリハビリスタッフに相談してみてください。見た目だけでは判断できない、その方だけの「最適な歩き方」があるはずです。


この記事はリハりん(訪問リハビリ・鍼灸)が、脳卒中後のリハビリに関わる方々に向けて作成しました。個別の症状やリハビリ内容については、担当の専門家にご相談ください。

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