― Peterka(2002)と Vuillerme(2001)を軸に ―
1. 姿勢制御は「平均化」ではなく「重みづけ」
Peterka(2002)は、人の姿勢制御を
視覚・前庭・体性感覚の単純な足し算ではなく、状況依存で重みが変わる制御系として定義した。
姿勢制御 = Sensory integration
姿勢の“個性”= Sensory reweighting
ここが重要。
- 不安定な床 → 体性感覚の信頼度↓
- 視覚情報が安定 → 視覚の重み↑
- 暗所・視覚攪乱 → 前庭・体性感覚の重み↑
つまり
人は「使える感覚を使って立っている」のではなく
「信用している感覚に姿勢を委ねている」
これがそのまま
👉 視覚依存型姿勢
👉 体性感覚依存型姿勢
という「姿勢の個性」になる。
2. 視覚依存・体性感覚依存は“性格”ではない
臨床でよくある誤解。
❌「この人は視覚優位タイプ」
❌「体性感覚が弱い体質」
違う。
Peterkaのモデルでは、
重みづけは可塑的で、学習結果。
- 痛み
- 外傷
- 片側荷重の生活
- 恐怖回避
- 固有感覚のノイズ増大
これらがあると、
本来信頼できる感覚が“信用できない感覚”に格下げされる。
結果として、
- 視覚に逃げる
- 片側の体性感覚だけを使う
- 安定する側へ重心を寄せる
ここで次の論文につながる。
3. 感覚の重みづけの偏りが「左右差姿勢」を固定する
Vuillerme et al.(2001)
Vuillermeらは、足底・固有感覚入力の変化が姿勢制御に与える影響を検討し、
Proprioceptive weighting が変わると、姿勢の対称性が崩れ、それが慢性化する
ことを示した。
ポイントはここ👇
- 体性感覚入力が左右で非対称
- その状態が続く
- 中枢は「左右非対称でも立てる」と学習
- 非対称が“正解”として再現され続ける
つまり、
左右差姿勢は
筋力差の結果ではなく、感覚重みづけの学習結果
ということ。
筋肉はただの実行部隊。
犯人は感覚の信用度の偏り。
4. なぜ左右差は「意識しても直らない」のか
答えはシンプル。
姿勢制御は無意識制御だから。
- 意識:皮質
- 姿勢:脳幹・小脳・感覚統合系
左右差姿勢の患者に
「まっすぐ立ってください」と言っても無理。
なぜなら、
- 中枢にとっては
👉 今の歪みが「最も安定する状態」 - 修正=不安定化
👉 危険判定
だから、
- 修正しようとすると揺れる
- 揺れると元に戻す
- 結果、左右差が強化される
非常に合理的な失敗。
姿勢の左右差は“悪”ではない
重要な視点。
左右差は
- 生存戦略
- 痛み回避
- 安定化戦略
敵ではなく、結果。
壊す対象ではなく、
書き換える対象。
まとめ
姿勢の左右差とは、
感覚再重みづけの偏りが中枢に学習された結果であり、
筋骨格の問題ではなく「感覚の信用度の問題」である。
この視点がないと、
一生「左右差が強いですね」で終わる。


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