脳卒中後のリハビリ、とくに麻痺した手足の回復は、
「どれだけやっても頭打ちになる」
そんな壁にぶつかりやすい分野です。
その中で近年、注目されているのが頭皮鍼(scalp acupuncture)。
「脳に近いから効きそう」というイメージ先行ではなく、
実際の研究データではどうなのか?
2021年に発表されたFrontiers in Neurologyのメタ解析をもとに、
事実ベースで整理します。 fneur-12-746567
どんな論文なのか?
この研究は、
脳卒中後の片麻痺に対する頭皮鍼の効果を検証した
ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析です。
研究のポイント
- 対象:脳卒中後の片麻痺患者(急性期〜慢性期)
- 解析した論文数:30本のRCT
- 評価指標:Fugl-Meyer Assessment(FMA)
- 上肢・下肢の運動機能を定量評価する、世界標準のスケール
- 比較:
- 通常の西洋医学的治療(薬+リハ)
- vs
- 通常治療+頭皮鍼
つまり、
👉「頭皮鍼を追加する意味があるのか?」
を真正面から検討しています。
結果:運動機能は“有意に”改善した
① 1か月後の変化
- FMAスコア:平均 +10.3点
- 統計的に有意(P < 0.01)
② 3か月後の変化
- FMAスコア:平均 +15.2点
- 1か月より改善量がさらに大きい
重要なのはここです。
治療期間が長いほど、改善が大きい
これは
「一発で劇的に治す治療」ではなく、
神経の回復プロセスを“積み上げる治療”
であることを示しています。
上肢にも効くのか?
はい。
このメタ解析では、
- 上肢のみ評価したRCT
- 上肢+下肢の合計点を評価したRCT
どちらでも、頭皮鍼併用群が有利という結果でした。
特に多く使われていたのが、
- 運動野エリア(MS6)
- 感覚野エリア(MS7)
つまり、
「運動皮質を狙った刺激」が中心です。
じゃあ、完璧なエビデンスか?
結論から言います。
いい結果は出ている。でも、質は高くない。
論文内でも、かなり正直にこう書かれています。
問題点
- 30本中、シャム鍼を使った研究は1本だけ
- ほとんどの研究で盲検化なし
- ランダム化手法や脱落例の記載が不十分
- 研究はすべて中国で実施(毎日実施する環境が揃っている)
要するに、
「効果が出やすい条件が揃っている可能性は否定できない」
という冷静な評価です。
それでも無視できない理由
ここが重要。
- 30本中ほぼすべてで改善方向
- FMAで10〜15点という改善量は、臨床的にも無視できない
- 慢性期を含んでいる(=自然回復だけでは説明しにくい)
つまり、
「質は低めだが、シグナルは一貫している」
これは、
脳卒中リハビリの研究では実はかなり珍しいパターンです。
臨床的にどう考えるべきか?
頭皮鍼は――
- ❌ 魔法の治療ではない
- ❌ 単独で機能が劇的に戻るわけではない
でも、
- ⭕ リハビリと組み合わせる“ブースター”
- ⭕ 中枢神経の可塑性を底上げする補助刺激
- ⭕ 特に慢性期で伸び悩むケース
ここに価値があります。
まとめ
- 頭皮鍼は、脳卒中後の運動機能改善に
有意な改善を示す研究結果がある - 特に3か月以上の継続で効果が大きくなる傾向
- ただし、研究の質は高くなく
エビデンスレベルAとは言えない - それでも
「慢性期で伸びない壁を崩す補助戦略」
としては、十分検討に値する


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