腰痛の正体を構造から理解する

疼痛

― 椎間関節・筋膜・すべり症・骨代謝まで ―

腰痛は「年のせい」「姿勢のせい」で片づけられがちですが、
実際は原因ごとに痛みの出方も、対処法もまったく違います。

ここでは、臨床で頻繁に遭遇する腰痛を
解剖・病態・身体所見ベースで整理します。


椎間関節性腰痛|ピンポイントで痛む腰痛

構造と痛みの仕組み

椎間関節は

  • 関節軟骨
  • 関節包
  • 滑膜
    からなるれっきとした関節で、内部には滑液(関節液)が存在します。

この関節包・滑膜に炎症が起こると、はっきりした局所痛が出ます。

神経支配

痛みを伝えるのは
脊髄神経後枝の内側枝
ここを外すと診断も治療もズレます。

臨床的特徴

  • 痛む場所が明確
  • 押すと痛い(圧痛)
  • 腰を反らすと悪化
  • 臀部・仙腸関節付近への関連痛が出ることもある

鍼治療の考え方

臨床では
棘突起から外側1.5〜2.5cm前後
(※レベルにより差あり)へ刺入し、局所循環を改善させます。


筋・筋膜性腰痛|一番多い、でも軽視されがちな腰痛

主な原因筋

中心となるのは脊柱起立筋群

  • 腸肋筋
  • 最長筋
  • 棘筋

覚え方は
👉 「超・最・強」

どんな人に多い?

  • 長時間のデスクワーク
  • 同じ姿勢が続く生活
  • 「動かない」ことが仕事の人

痛みの特徴

  • 軽く押すだけで痛い
  • でもマッサージされると気持ちいい
    → 典型的な筋・筋膜性疼痛です。

「L2が痛い」と訴える理由

腰部からの侵害刺激は、
脊髄後角で収束(収束投射)するため、
臨床的にはL2高位付近の痛みとして認識されやすい
傾向があります。

つまり

L2が痛い = L2が原因
ではありません。

画像診断の限界

X線(レントゲン)は
骨を見る検査
筋肉や筋膜は写りません。

「画像は異常なし=問題なし」
これは完全に別物です。


脊椎分離症・すべり症|若年と中高年で正体が違う

脊椎分離症

椎弓の連続性が断たれた疲労骨折
10代スポーツ選手に多く、X線では
「テリアの首輪」サインが有名です。

分離すべり症

分離症の約20%が移行。
20〜30代男性に多く見られます。

変性すべり症

骨折ではなく、
椎体全体が前方へ滑るタイプ

  • 40歳以上の女性に多い
  • 脊柱管が狭くなりやすい
  • 間欠性跛行が特徴

👉 100〜200m歩くと痛み・しびれ
👉 少し休むとまた歩ける


変形性脊椎症と圧迫骨折|加齢と骨の問題

変形性脊椎症

加齢で椎間板が潰れ、
隙間を埋めるために骨棘(こつきょく)が形成されます。

特徴は

  • 動き始めが痛い
  • 動いているうちに楽になる

圧迫骨折

多くは骨粗鬆症が背景。
特に
胸腰椎移行部(T12〜L2)
で起こりやすい。


骨粗鬆症とくる病・骨軟化症の違い

骨粗鬆症

  • 骨量が減る
  • 骨の質(石灰化)は正常
  • 重症でなければ血液検査は正常

くる病/骨軟化症

  • 骨量は正常
  • 石灰化ができない
  • ALP上昇
  • 低Ca血症でテタニーが出ることも

腎不全ではビタミンDを活性化できず、
この状態に陥ることがあります。

例えるなら

鉄筋コンクリートの建物で考えると分かりやすい。

  • 骨粗鬆症
     → 材料がスカスカ
  • 骨軟化症
     → 材料はあるが、コンクリートが固まらない

ぎっくり腰の正体

「一瞬でブチッ」とくる腰痛。
その多くは

  • 椎間関節の炎症
  • それを守ろうとする防御性筋攣縮
  • 筋・筋膜の急性障害

この複合型です。

原因は一つじゃない。
だから対処を間違えると長引きます。


まとめ|腰痛は「名前」で決めるものじゃない

  • 腰痛は構造と病態で考える
  • 画像だけでは分からない痛みがある
  • 同じ「腰痛」でも、治療戦略は別物

腰痛は雑に扱うと、
雑に治らない。

ここを理解しているかどうかで、
結果は大きく変わります。

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