― 脊椎にかかる本当の負荷を「体内計測」で調べた研究 ―
「椅子から立ち上がる途中で腰が痛い」
これ、臨床では本当によく聞きます。
実はこの“立ち上がり”という何気ない動作、
脊椎にはかなり大きな負荷がかかっていることが、体の中にセンサーを入れた研究でハッキリ示されています。
今回はその論文を、できるだけわかりやすく解説します。
この研究、何がすごいの?
この研究の最大の特徴はここ。
「脊椎の中にセンサーを埋め込んで、日常動作中の負荷を直接測った」
モデル計算でも、筋電図の推定でもありません。
実測値です。
正直、ここまでやってる研究はかなり珍しい。
対象
- 椎体骨折などで
椎体置換ケージ(VBR)を入れた患者5名 - ケージに無線センサーを内蔵
何をした?
- 歩く
- 階段を上る
- 椅子から立つ
- 座る
- 物を持つ
- 前屈する
など、日常生活の動作を普通にやってもらい、その時の脊椎負荷を測定
結論を先に言うと
この論文の結論はかなり明確。
✔ 立ち上がり・座り動作は、脊椎負荷がかなり高い
- 「椅子から立つ」「座る」は
脊椎にかかる合力(圧縮+せん断)がトップクラス - 5人全員で高負荷動作ランキング上位
つまり、
立ち上がるだけで、腰には強いストレスがかかっている
ということ。
どのくらい負担がかかるの?
立ち上がり動作中の脊椎負荷は
約500〜1200N(ニュートン)。
イメージしづらいですが、
- 体重50〜70kgの人が
- 腰で体を支えながら動いている状態
と思ってください。
しかもこれは
「正しく立った場合」も含まれます。
なぜ立ち上がりで腰が痛くなりやすいのか?
論文のデータから見えてくる理由はシンプルです。
ポイント① 上半身が前に倒れる
立ち上がる時、人は必ず上体を前に倒します。
すると何が起きるか?
- 重心が前に移動
- それを止めるために背中の筋肉が強く働く
- 結果、脊椎を押しつぶす力が増える
ポイント② 動作の途中が一番キツい
特に負担が大きいのは、
- 立ち上がりの途中で止まる
- ゆっくりすぎる動作
- 反動を使わず腰で伸ばす
この状態、
筋肉は一番頑張らされるのに、体はまだ立てていない。
腰が文句を言うタイミングです。
ポイント③ フォーム次第で負担は激変する
この論文、かなり重要なことを言っています。
同じ動作でも、人によって脊椎負荷は大きく違う
つまり、
- 立ち方
- 足の位置
- 椅子の高さ
- 手を使うかどうか
これだけで、腰への負担は別物になります。
臨床・日常でどう活かす?
ここが一番大事。
腰が痛い人にまず勧めたいポイント
① 椅子を低くしすぎない
低い椅子=立ち上がり負荷は爆増。
可能なら数cm高くするだけで違う。
② 手を使って立ってOK
「手を使う=悪」じゃない。
腰を守る合理的な戦略です。
③ 胸を突っ込まず、股関節から前傾
腰を丸めて前に倒れると、
負荷は腰一点集中。
「お辞儀は股関節から」が正解。
④ 途中で止まらない
一気に立つほうが楽なこと、実は多い。
止まるほど腰はしんどい。
⑤ 荷物を持った立ち上がりは要注意
この論文では、
- 物を持つ
- 腕を前に出す
これだけで脊椎負荷はさらに跳ね上がる。
まとめ
- 立ち上がり動作は、想像以上に腰へ負担がかかる
- 痛みの原因は「弱い」より「負担のかけ方」
- 立ち方を変えるだけで、腰はかなり楽になる
腰痛対策は、
特別な運動より、まず“動作の修正”。
これが、この論文から得られる一番現実的な答えです。


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