―5週間で耳鳴りが半減した臨床試験の中身―
耳鳴りという厄介な相手
耳鳴りは、実際には音がないのに「キーン」「ジー」と音が聞こえる状態。
15〜25%の人が悩まされており、特に高齢者では顕著です。
薬も決定打がなく、心理的ストレスや睡眠障害を引き起こすため、治療は難題とされています。
そんな中で注目されたのが――頭皮鍼+電気刺激です。
研究デザイン
ブラジルの研究チーム(Doi ら, 2016)は、耳鳴り患者50名を対象にランダム化比較試験(RCT)を実施しました。
期間:5週間(週2回×10回)
方法: 頭皮の「前庭蝸牛線」に両側刺鍼 1.5cm上方・長さ4cmの水平ラインに電気刺激
対象:中等度以上の耳鳴を持つ50〜85歳
比較: 鍼治療群(n=25) 無治療群(n=25)
📉 結果:耳鳴の強さが「半分」に!
治療前後の変化はこうでした。
治療前は、耳鳴りの強さが平均 8点(かなり強い) でしたが、治療後には 4点(半分以下) に低下。
一方、耳鳴りによる生活の支障度(THI)は 56点(重度) から 28点(軽度) まで改善しました。
どちらの指標も統計的に非常に有意(p=0.0001)で、単なる偶然では説明できないほどの効果が示されています。
つまり、たった5週間・2本の鍼で、耳鳴りの音量も生活のつらさも半減したという結果です。
| 評価項目 | 星評価 | 解説 |
|---|---|---|
| 結果の強さ | ★★★★★ | 5週間で耳鳴が半減、QOLも劇的改善(p=0.0001) |
| 安全性 | ★★★★★ | 副作用なし・短期間で完遂率92% |
| 再現性・明確さ | ★★★☆☆ | プロトコルは明快だが、追跡期間が短い |
| エビデンスレベル | ★★★★☆ | RCT(レベルⅡ)として中等度の信頼性 |
| 研究デザインの凄さ | ★★★☆☆ | 単純明快・効果は大きいが、偽鍼対照なし・短期試験 |
鍼の仕組みと狙い
頭皮鍼の前庭蝸牛線は、聴覚や平衡感覚に関わる脳領域(側頭葉・脳幹)と対応します。
電気刺激を加えることで神経の興奮を鎮め、脳内の“雑音信号”を整える――
つまり、「耳の中の問題」ではなく「脳の過剰反応」にアプローチする考え方です。
つまり、「短期効果は強烈だが、長期的な確証はまだ」という段階。
それでも、「耳鳴のボリュームを下げる」実感が得られる治療法として十分に価値があります
臨床的メッセージ
耳鳴りに悩む人は、
「薬ではなく、神経の興奮を直接落ち着かせる」頭皮鍼が有効な可能性があります。
特に、
- 夜眠れないほど耳鳴が強い
- ストレスや疲労で音が増す
- 検査で異常がなく「もう慣れるしかない」と言われた
こうしたケースでは、脳の再調整(neuro-modulation)としての鍼が選択肢になります。
まとめ
5週間・10回の頭皮+電気鍼で、
耳鳴が「半分」になり、生活の質も劇的に改善。
まだ完璧なエビデンスとは言えませんが、
「耳鳴りを脳から静める」このアプローチは、薬に頼らない新しい道を示しています。

