仙腸関節障害を「歪み」で語るのはもう限界

骨盤
― フォーム/フォースクロージャーから再構築する評価と治療 ―

はじめに:まだ“骨盤の歪み”で説明しているなら危険

仙腸関節由来の腰痛を
「左右差」「回旋」「ASIS/PSISの高さ」で説明するモデルは、

👉 再現性が低い
👉 痛みの説明になっていない
👉 介入の指針にならない

という問題を抱えています。

現在の力学モデルでは、

問題は“ズレ”ではなく、荷重時に締まらないこと

と整理されます。

仙腸関節は
荷重伝達関節 × 低可動 × 高靭帯依存

だからこそ、

微小な剪断ストレスを
フォーム+フォースクロージャーで制御できるか

が核心です。


1. なぜ“ほぼ動かない関節”が強く痛むのか

● 仙腸関節は侵害受容の温床

ヒト仙腸関節の靭帯・関節包には
Substance P / CGRP陽性神経線維が存在し、
侵害受容入力源になり得ることが示されています。

👉 Fortin et al., 1994
👉 Sakamoto et al., 2001

つまり、

“構造的に痛めやすい関節”

という前提を持つ必要があります。


● 小可動 × 高荷重 = 靭帯依存関節

仙腸関節は数ミリの可動しかない。
しかし体重・地面反力はここを通過する。

動かない関節ほど
👉 靭帯で止める
👉 摩擦で安定させる
👉 筋で圧縮する

必要がある。

このモデルが
フォームクロージャー/フォースクロージャー理論です
(Vleeming et al.)


2. 腰痛を生む4つのメカニズム

① フォームクロージャー低下

関節面適合+摩擦による受動安定が弱い
→ 靭帯に剪断が集中
→ 痛み入力

② フォースクロージャー破綻(本丸)

腹横筋・内腹斜筋・大殿筋
+胸腰筋膜+仙結節靭帯

この連結が働くと
self-bracing(自己固定)が起きる。

破綻すると:

👉 関節圧縮不足
👉 剪断増加
👉 靭帯ストレス増大
👉 慢性腰痛

③ 防御スパズム

侵害受容 → 中枢抑制
→ 共同収縮過多
→ 荷重分散不能

④ 腰椎代償

仙腸関節で逃がせない剪断を
腰椎が回旋で処理
→ 椎間関節・椎間板ストレス


3. 診断:Laslettクラスターの位置づけ

仙腸関節痛は画像では診断困難。
したがって

👉 疼痛誘発テストのクラスター
👉 診断ブロック
が参照基準になります。

Laslettらは、

複数テスト陽性で診断精度が上がる

ことを示しました。

ただし重要なのは:

陽性=確定ではない

最新レビューでは
「確率を上げるだけ」と整理されています。

つまり臨床では:

テストは“診断”ではなく
仮説生成ツール

として使う。


4. 治療の優先順位

優先①:滑走不全の除去

筋膜・脂肪・骨膜の癒着
→ 収縮戦略の歪み
→ フォースクロージャー不能

筋が働かない状態で
トレーニングしても無意味。

まずは
👉 滑走回復
👉 組織過敏の鎮静


優先②:フォースクロージャー再起動

狙うのは筋力ではなく

荷重時の圧縮戦略

主役:

  • 腹横筋
  • 内腹斜筋
  • 大殿筋
  • 胸腰筋膜テンション

目標:

👉 勝手に締まる骨盤


優先③:荷重課題で再学習

仙腸関節は
立位関節

寝て整えて終わると
100%再発する。

必須:

  • 片脚荷重
  • 歩行
  • 方向転換
  • スポーツ動作

5. 「歪み」をどう扱うか

最新3D解析でも
健常者は普通に非対称

だから

歪み=異常

ではない。

問題は

歪みを制御できない運動戦略

である。


結論

仙腸関節痛の本質は

構造のズレではなく
荷重時の安定化失敗

評価も治療も

👉 見た目
ではなく
👉 力学戦略

で考える必要があります。

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