右の大腿筋膜張筋(TFL)への刺鍼によって、左回旋時の右腰部痛が解消した事例

疼痛

~右腰部痛と体幹回旋運動の関連性について~

1. スパイラル・ライン(SPL)による回旋運動の制御

スパイラル・ライン(SPL)は、身体を二重螺旋状に取り巻き、歩行時や運動時の回旋運動を調節・安定させる役割を担っています [1]。

解剖学的経路:

  • 右のSPLは、頭蓋骨右側から始まり、背部を通って反対側の左肩に繋がり、腹部を横切って右の上前腸骨棘(ASIS)に達します [1, 2]。そこから右の大腿筋膜張筋(TFL)、腸脛靭帯へと連続し、足を回って再び背部を上行して頭蓋骨に戻るという、身体を包み込む大きなスリングを形成しています [1, 3, 4]。

痛みの機序:

  • 体幹を左に回旋させる際、右側のSPLは引き伸ばされるか、その動きを制御するために緊張します。もしこのライン上の「駅(駅:筋付着部)」である右TFLに短縮固定(求心性負荷)が生じていると、ライン全体の連続性が損なわれ、回旋運動に対する「ブレーキ」として作用します [5-8]。このブレーキによって生じた歪みが、同じ経線上で連結している右腰部の組織に過剰な負荷(代償的緊張)をかけ、痛みとして現れたと考えられます [7, 9, 10]。

鍼の効果:

  • 右のTFLに鍼を刺すことでこのラインの緊張が解放されると、体幹の回旋を妨げていた「引き連れ」がなくなり、腰部への負担が軽減したのではないと考えます。

2.「ターンテーブル」としてのASISの機能

上前腸骨棘(ASIS)は、多くの筋膜の牽引力が交差する「ターンテーブル(転車台)」と呼ばれています。

ASISには、大腿筋膜張筋だけでなく、腰部の安定に深く関わる内腹斜筋も付着しています。

結論として、右大腿筋膜張筋が「スパイラル・ライン」という螺旋状の鎖の中でブレーキになっていたため、左回旋時に連結する右腰部へストレスがかかっており、鍼によってそのブレーキが外れたことで痛みが解消したと考えられます。も付着しています。

大腿筋膜張筋が過度に緊張していると、ASISを介して内腹斜筋やその奥の筋膜にまで影響を及ぼし、腰椎の適切な動きを阻害します。鍼によってTFLを緩めることは、このターンテーブルに集まる牽引力のバランスを整えることになり、結果として腰椎の可動性が回復し痛みが消失した可能性があります。


鍼治療と筋膜の科学的背景

近年の研究では、鍼の刺激(特に回転刺激)が結合組織(筋膜)のネットワークに機械的な変化を引き起こし、刺入部位から離れた場所までその効果が伝達されることが示唆されています。TFLという「駅」への刺激が、筋筋膜経線(トレイン)を通じて腰部という別の部位の組織を解放したと考えられます。

結論として、右大腿筋膜張筋が「スパイラル・ライン」という螺旋状の鎖の中でブレーキになっていたため、左回旋時に連結する右腰部へストレスがかかっており、鍼によってそのブレーキが外れたことで痛みが解消したと考えられます。

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