──「炎症じゃない。腱が擦り切れて壊れているだけだ」
肘の外側にズキッと刺すような痛み。
ペットボトルを開けるだけで激痛。
タオルを絞る、バッグを持ち上げる、マウスを握る。
すべてが地味に痛くて、生活のたびにストレスが溜まる。
これが 外側上顆炎(テニス肘)。
だが、ここでハッキリ言っておく。
外側上顆炎は“炎症”じゃない。
本当の正体は「腱が擦り切れて弱った状態=腱症」。
だから湿布だけ貼っても治らないし、
安静だけでも治らないし、
肘だけ揉んでもほぼ治らない。
「痛い場所」と「原因の場所」は完全に別だ。
臨床で数えきれないほど見たが、
治らない人ほど “痛い場所だけ” に意識が向いている。
外側上顆炎はそんな甘い疾患じゃない。
今日はまず 「病態の本質=なぜ壊れるのか?」 を
力学・解剖・臨床の視点から一気に理解してもらう。
ここを押さえたら、あなたの治療もセルフケア指導も別次元になる。
🔥【なぜ炎症じゃないのか?】
組織学(病理)で外側上顆の腱を調べると…
✔ コラーゲン線維の乱れ(変性)
✔ 血管の増生(治りかけの弱い血管)
✔ 微小断裂(micro-tear)
✔ 修復細胞の異常増殖
✔ 急性炎症の細胞(好中球・マクロファージ)が“ほぼいない”
つまり、
- “赤く腫れて熱を持つ”
- “炎症細胞がワッと来てる”
そんな典型的な炎症像は 見つからない。
だから
湿布 → 効かない
炎症止めの薬 → 本質的には効かない
という現象が起きる。
🔥【炎症ではないから、安静だけでは治らない】
炎症なら
- 休む
- 冷やす
- 炎症止め
で治る。
だが外側上顆炎は 腱が弱くなっている病態なので
安静にしても、腱は強くならない。
必要なのは
✔ 使い方の改善(shearの削減)
✔ 血流改善(鍼が強い)
✔ エキセントリックで腱を再構築
✔ 肩・肘・前腕のアライメント調整
これら“治る方向へ誘導する作業”。
■ 外側上顆炎は「炎症」ではなく“腱の変性”
一般的には「テニス肘=炎症」と思われているが、
現実はまったく違う。
研究の中では、外側上顆炎の腱(特に ECRB:短橈側手根伸筋)は、
コラーゲン線維が乱れる
微小断裂(micro-tear)がある
血流が低い
修復細胞がダラダラ働いてる
慢性の“劣化した組織”になっている
という所見が非常に多い。
つまり、
「擦り切れたロープを無理やり使い続けている状態」
に近い。
だから湿布で冷やしても治らないし、
炎症止めを飲んでも本質は変わらない。
必要なのは 腱を“再生モード”に切り替えること だ。
■ ECRB(短橈側手根伸筋)が壊れるシンプルな理由
──「横ズレ(せん断)+牽引」この2つだけで説明できる
外側上顆炎を一言でまとめるとこうなる。
ECRBが“横にこじられながら引っ張られ続けて壊れる病気”。
腱は“縦方向の引っ張り”には強い。
でも“横方向の摩擦(shear)”にはとんでもなく弱い。
そして日常動作は、
この“腱が一番嫌う刺激”を容赦なく毎日与えてくる。
具体的にはこう。
① 前腕が回内する
前腕が回内(手のひらが下)になると、
ECRBの腱は 斜め下(掌側)方向に引かれる。
外側上顆から見れば、
腱が“横にずらされる”形になる。
これが「横ズレ(せん断)」。
あなたの患者の多くが
仕事・家事・スマホ・PCで常に回内しているはずだ。
② 手首を伸ばす
手首を伸ばせば伸ばすほど ECRB の牽引は増える。
つまり 引っ張り(tension) が強くなる。
PC作業、調理、育児、介護、荷物を持つ動作。
全部“手首伸展”のオンパレード。
なぜ外側上顆炎に“鍼灸”が効くのか?
──腱修復・痛覚調整・動作再学習の3本柱
外側上顆炎に鍼が効くのは「なんとなく」ではない。
解剖学・生理学・神経学的に“筋が通っている”。
鍼灸が外側上顆炎に強い理由は、この3つに尽きる。
① 腱修復スイッチを入れる(微小刺激 → 修復反応)
鍼刺激により、
血流増加 修復細胞の活性化 コラーゲン再構築(タイプⅢ→Ⅰへの変換)
が起きる。
変性腱に必要なのは 「炎症を鎮める」ではなく「再構築」。
② 痛覚過敏をリセットする(末梢+脊髄+中枢)
外側上顆炎の痛みは“腱の劣化”だけでは説明できない。
神経系の過敏化が大きく関与する。
鍼刺激は
末梢の痛覚受容器を調整 脊髄後角で抑制回路を強化 脳の感作を低下
これらを同時に行う。
だから “痛みが軽くなり動かしやすくなる”。
③ 過緊張筋を緩め、shear(横ズレ)を減らす
ECRBの周囲には
総指伸筋 長橈側手根伸筋 円回内筋 腕橈骨筋
など“shearを増幅させる筋”が密集している。
ここに鍼を入れると
α運動ニューロン抑制 過緊張のリセット 力の方向の正常化
が一気に起きる。
④ 遠隔穴で「動作パターン」が変わる
外側上顆炎に特に効きやすい遠隔穴は
手三里 曲池 肩髃 外関 合谷
特に 手三里+外関 は前腕伸筋群の“力方向”を変える。
鍼灸は
腱を治し、筋を緩め、動作のクセまで変える
という3段階を同時にやるから効く。
運動が必要な理由
🔥【理由①:テニス肘は“腱が弱っている病気”だから】
外側上顆炎の腱はどうなってる?
- コラーゲン線維がバラバラ
- 走行方向が乱れる
- 血流が少ない
- 微小断裂が散在
- 修復が追いつかない
つまり、
腱の“構造が崩れた状態(tendinosis=腱の変性)”
湿布や安静では
→ コラーゲンは再構築されない
→ 線維は整わない
→ 強さは戻らない
だから、
運動で腱に正しい刺激(機械的ストレス)を与えないと治らない。
🔥【理由②:エキセントリック刺激でしか“腱は再構築されない”】
腱は負荷をかけたときにだけ
修復細胞(tenocytes)が動き出す。
特に強いのが
エキセントリック(伸張性収縮)。
エキセンを入れると:
- コラーゲンの太さが戻る
- 線維配列が整う
- 腱の伸張耐性が上がる
- 間質の変性が減る
簡単に言うと、
エキセンこそ唯一、腱を“新品に近づけるリハビリ”
🔥【理由③:shear(横ズレ)に対抗する“耐性”が必要だから】
テニス肘の核心は
「横ズレ+牽引(shear+tension)」の複合ストレス。
運動をしないと
→ このストレスに腱が耐えられないまま
→ ちょっと使うだけで再発
→ 患者が“すぐぶり返す”理由がこれ
エキセンで負荷を入れると
腱は「ズレに強い」「引っ張りに強い」繊維構造に変わる。
🔥【理由④:痛みの原因が“動作のクセ”だから】
外側上顆炎の患者の動作には、ほぼ全員にクセがある:
- 手首を反らす
- 回内固定
- 肘が内に倒れる
- 握る瞬間に手首がブレる
- 肩内巻き
- 肩甲骨前傾
これらが ECRBを毎日こすり続ける元凶。
運動(姿勢修正・肩外旋・前腕制御)は
→ このクセを消す
→ 力の流れを正す
→ “壊れないフォーム”を作る
つまり運動は 治療 兼 再発予防の核心。
🔥【理由⑤:安静だけだと“腱はさらに弱くなる”】
腱は負荷をかけないと、
なんと コラーゲンが細くなり、断裂しやすい方向に退化する。
だから
「痛い → 動かさない → さらに弱る → もっと痛い」
の負のスパイラルに入る。
運動で
腱の代謝(turnover)を上げないと
腱は治らず、むしろ悪化する。
結論
テニス肘は「腱の劣化」。
休めば治る病気じゃない。
運動でしか腱は強くならない。
だから運動は“必須”であり、“治療本体”だ。

