― 関節水腫が痛みを生むメカニズムと臨床評価 ―
「膝に水が溜まっていますね」と言われた経験がある人は多いですが、これは単なる“結果”ではありません。
関節水腫そのものが痛みと機能障害の原因になります。
膝の水腫は放置すると慢性炎症・拘縮・筋抑制を引き起こし、回復を遅らせる要因になります。ここでは、
✅ なぜ水が溜まるのか
✅ どうやって定量評価するのか
✅ 治療で本当に痛みは変わるのか
を臨床目線で整理します。
1. 膝に水が溜まる正体
膝の「水」は、実体としては滑膜が分泌する関節液の過剰産生です。
正常な関節液は潤滑・栄養供給の役割を持ちますが、異常刺激が加わると滑膜が過剰反応し、水腫になります。
主な原因
■ 変形性膝関節症(膝OA)
軟骨の摩耗 → 破片 → 滑膜刺激 → 滑膜炎
初期の膝OAは炎症ドミナントです。つまり「摩耗」より「炎症」が痛みの主体。
■ 外傷
ACL損傷、半月板損傷では
👉 受傷直後から急速な腫脹
👉 血腫+関節液混在
急性水腫は神経反射による大腿四頭筋抑制も引き起こします。
■ 炎症性疾患
関節リウマチ、痛風、偽痛風
これは滑膜そのものが炎症の主座。
■ 滑膜ヒダ障害(タナ)
軽視されがちですが、慢性刺激で顕著な水腫を作ることがあります。
2. 水腫は“触診だけ”では不十分
水腫は主観ではなく定量化すべき対象です。
■ 膝蓋跳動
古典的で有用なテスト。
ただし「ある/ない」の二択評価に近い。
臨床感覚に依存するのが弱点。
■ 超音波による面積測定(最も実用的)
膝蓋上嚢をエコーで描出し、
👉 エコーフリースペース(液体部分)の
👉 面積を mm² で算出
これで客観的な数値管理が可能になります。
リハビリ前後で比較できるので、
「治療が効いているか」が見える。
これは現場で非常に強い武器です。
■ MRI評価
研究では4段階評価などを使用。
臨床より研究用途寄りですが、
👉 水腫量と痛みの関連
👉 軟骨病変との関係
を解析する上で重要。
3. 水腫が痛みを作る仕組み
水はただの液体ではありません。
■ 関節内圧の上昇
圧力 ↑
→ 滑膜受容器刺激
→ 痛み・伸展制限
穿刺排液で即時除痛するのはこのため。
“水を抜くと楽になる”のは気のせいではなく
力学的な除圧効果。
■ 炎症メディエーター
水腫の中には炎症物質が豊富。
これが
👉 痛覚感作
👉 過敏化
👉 慢性疼痛化
を促進します。
つまり水腫は「痛みの培養液」。
■ 筋抑制
関節腫脹は神経反射で
👉 大腿四頭筋をオフにする
これを
Arthrogenic Muscle Inhibition(AMI)
と言います。
筋トレしても入らない理由はここ。
■ 長期放置 → 拘縮
慢性液貯留
→ 結合組織増生
→ 滑膜肥厚
→ 可動域制限
早期コントロールしないと後で苦労します。
4. 治療で痛みは本当に変わるのか
答えは明確。
水腫が減るほど痛みは減る。
研究では:
👉 3ヶ月の運動療法
👉 水腫面積が有意減少
👉 KOOS痛みスコア改善
さらに重要なのは、
👉 筋力向上より
👉 水腫減少の方が
👉 痛み改善と強く相関
という点。
これは臨床的にかなり示唆的。
「まず腫れを取れ」は正しい戦略。
5. 臨床の実践ポイント
✔ 水腫は症状ではなく病態
✔ 触るだけでなく測る
✔ 圧を下げる=痛みを下げる
✔ 運動療法は排液装置
✔ 腫れを無視して筋トレは遠回り
まとめ
膝の水腫は、
👉 炎症
👉 圧力
👉 神経抑制
👉 慢性拘縮
を引き起こす中枢病態です。
だからこそ、
評価 → 定量 → 介入 → 再評価
このループが重要。
水腫を制する者が、膝痛を制します。


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