──それは「腰が硬い」のではなく「股関節で反れない」
「腰を反らしてください」と言うと、
骨盤がグッと前に倒れて、腰椎が潰れるように反る人がいる。
本人は「ちゃんと反れている」つもり。
でも臨床家から見ると、これは代償の塊だ。
結論から言う。
骨盤前傾で反る人は、股関節伸展を腰椎でごまかしている。
これは感覚論じゃない。
運動学・筋活動・脊柱アライメントの研究で、だいたい説明がつく。
① 骨盤前傾=腰椎前弯が増えるのは構造的に当たり前
まず大前提。
- 骨盤が前傾する
- → 仙骨が前下方に傾く
- → 腰椎前弯(lordosis)が増える
これは構造的な連動で、切り離せない。
つまり
「腰を反らしているように見えて、実際は骨盤を倒しているだけ」
というケースが普通に起きる。
▶️ 骨盤傾斜と腰椎前弯の関連は、姿勢・脊柱バランス研究で一貫して報告されている
(Vialle et al., 2005 / Legaye et al., 1998)
② 股関節伸展が使えないと、腰が過剰に働く
ここが一番重要。
本来、体幹伸展動作では
股関節(大殿筋)+体幹が協調して働く。
ところが、
- 大殿筋の出力が弱い
- 股関節伸展の運動制御が下手
- もしくは腸腰筋・大腿直筋が硬い
こうなるとどうなるか?
👉 股関節で伸びられない分を、腰椎で稼ぐ。
実際、
股関節伸展時に腰椎前弯や骨盤前傾が増大する代償パターンは、
運動学・EMG研究でも確認されている。
▶️ Janda的な筋不均衡モデル
▶️ 股関節伸展課題での腰椎過剰運動
(Sahrmann, 2002 / Tateuchi et al., 2012)
③ 「反り腰タイプ」は筋バランスがだいたい決まっている
骨盤前傾で反る人の身体、ほぼテンプレ。
過活動・短縮しやすい
- 腸腰筋
- 大腿直筋
- 脊柱起立筋
- 腰方形筋
機能低下しやすい
- 大殿筋
- 腹横筋・腹斜筋
- ハムストリングス(※使い方の問題)
結果どうなるか。
- 骨盤は前に倒れやすい
- 腹圧が抜ける
- 腰椎だけで「反る」動きになる
▶️ 骨盤前傾位では脊柱起立筋・腰方形筋の活動が増大
(Lee et al., 2011)
④ 動作のクセは「柔らかさ」より「学習」の問題
よくある誤解。
❌「ストレッチすれば治る」
❌「腰が硬いから反れない」
違う。
これは多くの場合、
運動パターンの学習エラー。
- 座位中心の生活
- 股関節を伸ばす経験が少ない
- 体幹と股関節を分けて使ったことがない
この積み重ねで、
「反る=腰を潰す動き」
が脳内にインストールされている。
だから
柔軟性があっても前傾で反る人は反る。
⑤ 骨盤形状(Pelvic Incidence)の個体差も無視できない
少し専門的な話。
- Pelvic Incidence(PI)が高い人→ もともと腰椎前弯が大きい設計
このタイプは、
中間位ですでに反り気味。
だから反ろうとすると、
- 骨盤前傾
- 腰椎下部に集中
になりやすい。
▶️ 脊柱矢状面アライメント研究
(Schwab et al., 2013)
※ ただし
PIが高い=痛いではない。
問題は「制御できていないこと」。
まとめ:腰を反ると骨盤が前傾する理由
整理する。
腰を反るときに骨盤前傾が出る人は、
- 股関節伸展が使えない
- 大殿筋と腹圧が弱い
- 腸腰筋・起立筋が優位
- 動作学習が腰主導
- もともとの骨盤形状
これらが重なって起きている。
臨床的に見るべきポイント
評価で見るべきはここ。
- 腰椎を固定した状態で股関節伸展できるか
- 腹圧を保ったまま反れるか
- 反り動作で「腰」か「股関節」どちらが先に動くか
- prone hip extension で骨盤が即前傾しないか
これを見ずに
「反り腰ですね」「ストレッチしましょう」は、正直雑。
最後に一言
腰を反らせたときに骨盤が前傾するのは、
身体がサボってるんじゃない。
“一番楽なやり方”を覚えてしまっただけ。
だから直すには、
筋トレより先に動きの再教育。


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