―「硬い=悪い」では説明できない本当の話
「ここ、かなり硬いですね」
そう言われて押されると、思わず体を引いてしまうほど痛い。
多くの人はこう考えます。
「硬いから痛いんだ」と。
でも、これは正確ではありません。
硬いこと自体が、痛みの原因ではないのです。
結論から言うと
👉 硬い筋肉を押すと痛いのは、筋の中の“痛みセンサー”が過敏になっているから
つまり
筋の硬さ = 構造の問題 押したときの痛み = 神経の問題
この2つは、イコールではありません。
「硬いのに痛くない筋」「柔らかいのに痛い筋」がある理由
現場では、こんな経験があるはずです。
触るとカチカチなのに、本人は無痛 見た目は柔らかいのに、少し触れただけで激痛
もし
「硬さ=痛み」
なら、こんなことは起きません。
ここで重要なのが
👉 痛みは筋肉そのものではなく、神経が作っている感覚
という事実です。
筋肉の中で起きていること
① 筋が硬くなる
筋肉が硬くなる背景には、次のような要因があります。
長時間の同一姿勢 持続的な筋収縮 過負荷 トリガーポイント 使い方の偏り
この段階では、まだ痛みは必須ではありません。
② 硬い部分では「環境」が悪くなる
問題はその中身です。
硬くなった筋の内部では
血流が低下 酸素不足 老廃物が流れにくい 筋内のpHが下がる(酸性化) ATP(細胞内物質)が漏れ出る
筋肉の痛みを直接引き起こす代表的な刺激は
👉 低pH(酸)とATP
であることが分かっています
③ 筋の中の「侵害受容器」が過敏になる
筋肉の中には
Group III Group IV
と呼ばれる筋侵害受容器(痛みセンサー)があります。
これらは
酸性環境 ATP 炎症性物質
によって感度が一気に上がる。
これを
👉 末梢性感作
といいます。
結果として
本来は痛くない刺激 指で軽く押した程度
でも
👉 「強い痛み」として感じる状態になります。
押すと痛い理由の正体
ここが核心です。
硬い筋肉を押す行為は
❌ 筋線維を押しているだけ
ではありません。
⭕ すでに過敏化した痛みセンサーを、直接刺激している
なぜ「硬いところ」が特に痛くなりやすいのか
理由は主に3つあります。
① 痛みセンサーが多い場所だから
筋膜、筋腱移行部、トリガーポイント周辺は
感覚神経の密度が高い。
② 局所虚血で刺激物質が溜まりやすい
特にトリガーポイントでは
毛細血管が圧迫され 血流が遮断され 痛みを出す物質が“その場に滞留”する
このため
👉 飲み薬が効きにくいケースも多くなります
③ 慢性期では「中枢」が増幅する
痛みが長引くと
脊髄 脳
でも感度が上がります(中枢性感作)。
その結果
👉 押した刺激が
👉 本来以上に強い「痛み」として処理される
圧痛が異常に強い人ほど、
この要素が関わっていることが多いです。
それでも「押すと楽になる人」がいるのはなぜ?
矛盾しているようですが、これも事実。
押すことで
神経入力が一時的に変化 下行性疼痛抑制系が働く可能性がある。
結果
👉 一時的に楽になることがある
ただし
❗ 原因(負荷・使い方・姿勢)を変えないと再発する
これもまた現実です。
まとめ
硬い筋肉が痛いのは
👉 硬いからではない 筋の中の痛みセンサーが過敏になっているから
押す行為は 👉 過敏化した神経を直接刺激している 慢性化すると 👉 脳・脊髄の増幅も加わる
だから
❌「硬いからほぐす」
ではなく
⭕「なぜ過敏になったのか」を考える
これが、痛みを本質的に理解する視点です。

