【手根管症候群】

未分類

手首じゃなく「腕の奥の筋肉」と「フタ」が悪さしてる話

〜内関への鍼はどこまで科学的に説明できるのか?〜

「スマホを持つと、親指〜中指がビリビリする」
「パソコンしてると、手首から先がだるくてしびれる」
「夜中に手の痛みで目が覚める」

こういう症状が続くと、だいたい言われる診断が 手根管症候群 です。

よくある説明は
「手首の中の神経が圧迫されていますね〜」
ですが、正直これだけだと だいぶ説明不足 です。

本当は、

前腕の“深層の筋肉”がガチガチになって、
それが手首の“フタ(屈筋支帯)”をゆがめて、
その下を通る神経が押しつぶされている

という構造の問題です。

そして、
その流れの“ど真ん中”に効くのが 内関(ないかん)への鍼 です。

今日は、

  • 屈筋支帯ってそもそも何者?
  • なんで上下に動くの?
  • 深層筋が悪さをしやすい理由
  • なぜ鍼、それも内関が効くのか

ここを、一般の方向けに分かりやすくまとめます。

  1. ① 手根管と「フタ(屈筋支帯)」の本当の役割
      1. 屈筋支帯は腱のシートベルト+ガイドレール+力の伝導路これを一手に引き受けてる「必要不可欠な押さえバンド」。
  2. ② 屈筋支帯は「押し上がる」だけじゃなく「締まって沈む」
    1. MRI で見える「フタの膨らみ」と痛みの関係
    2. エコーで見える「腱とフタの引っ張り合い」
  3. ③ 問題児は「前腕の深層筋」
    1. 「前腕の深層筋は浅層より硬くなりやすい(=過緊張・虚血になりやすい)」という“メカニズムベースの強い裏付け”は多数ある。
    2. 【1】深層筋は「血流が少ない」ことが複数の研究で証明されている
      1. ✔ 浅層より血流が届きにくい
      2. ✔ 低酸素(虚血)になりやすい
      3. ✔ 疲労物質が溜まりやすい
    3. 【2】深層筋は「姿勢保持や微細動作」で“ほぼ24時間活動”することが研究で確認済み
      1. ✔ スマホ・PC作業で深層筋の活動が長時間持続
      2. ✔ 作業姿勢で常時軽度収縮(休まらない)
      3. ✔ 長時間の低負荷収縮ほど筋疲労を起こしやすい
    4. 【3】深層筋は“筋紡錘が多く、過緊張になりやすい”ことが生理学研究で確立
      1. ✔ 反射で過緊張が続きやすい
      2. ✔ 疲労しても「休んでくれない」
      3. ✔ 交感神経ストレスなどで緊張が上がりやすい
    5. 【4】トリガーポイントは“深層筋の方に多い”と報告されている
    6. 【5】CTS の患者で深層屈筋群(FDP/FPL)の緊張亢進が多数報告
      1. ✔ 深層屈筋群の腱周囲の滑走低下
      2. ✔ 深層筋由来の腱テンション増加
      3. ✔ 深部前腕筋の厚み・緊張の増大
    7. 【6】鍼の研究で“深層筋由来のしびれ・痛みが改善する”報告多数
  4. ④ 「鍼じゃなくてもよくない?」に正面から答える
  5. ⑤ じゃあ「内関」に刺す意味は? そこが一番知りたい
    1. 1. 正中神経の“ほぼ真上”にある
    2. 2. 深層屈筋群の“交差ポイントの直上”
    3. 3. 手根管の“上流”で血流と圧を調整できる
    4. 4. 自律神経にも効くので「夜間痛」に強い
  6. ⑥ まとめ:なぜ内関に鍼をするのか?

① 手根管と「フタ(屈筋支帯)」の本当の役割

手首の中には、手根管 という細いトンネルがあります。
中身はぎゅうぎゅうで、

  • 指を曲げる腱が9本
  • 正中神経(しびれの犯人)

が通っています。

このトンネルの“フタ”になっているのが 屈筋支帯(くっきんしたい)
ここが硬くなったり形が変わると、下の神経が押されてしびれが出ます。

  • 屈筋支帯がある → 腱は軌道からズレず、パワーが指先まで届く
  • ないと → 腱が手首側に“ボコッ”と浮く → 力が逃げる → 指が弱くなる・ガタつく

屈筋支帯は腱のシートベルト+ガイドレール+力の伝導路これを一手に引き受けてる「必要不可欠な押さえバンド」。

多くの人は
「フタが下から押し上げられて神経が圧迫される」
というイメージを持っていますが、実際は もう一つ大事な方向 があります。


② 屈筋支帯は「押し上がる」だけじゃなく「締まって沈む」

屈筋支帯は“板”ではなく、
骨と骨の間に張られたハンモック状の靭帯のバンド です。

ここに働く力は大きく2つ。

  • 腱が中から 押し上げる力(手のひら側に膨らむ:palmar bowing)
  • 靭帯そのものが 縮んで締めつける力(retinacular tightening)

靭帯はゴムではなく、コラーゲンが束になった「引っ張りに強いバンド」 なので、
長期間テンションがかかると、

  • 硬くなる
  • 厚くなる
  • 伸びなくなる
  • さらに締め付けが強くなる

という変化を起こします。

つまり、

腕の筋肉が固い
→ 腱がよく擦れる
→ フタ(屈筋支帯)が硬く・分厚くなる
→ 自分で締まりながら、内側からも押される
→ 中が狭くなる → 神経が潰れる

こんな二重苦状態になっているわけです。

「押し上げられてるだけ」じゃない。
“自分で締まって沈んでもいる” のがポイントです。

多くの説明は、

「下から腱がフタを押し上げて→中が狭くなる→神経が圧迫される」

という“一方向”のイメージで終わっています。

でも実際の研究を見ていくと、
屈筋支帯は もっと動くし、もっと悪さをする

MRI で見える「フタの膨らみ」と痛みの関係

MRI で CTS の手首を撮ると、
屈筋支帯が掌側に弓なりに膨らんでいる(palmar bowing) ほど、
痛みのスコアが高い人が多い、という研究があります。

つまり、

「フタが前に押し出される」=「中の圧が高い」=「痛みも強い」

という関連がある。

エコーで見える「腱とフタの引っ張り合い」

動的エコー(超音波)で

  • 指を握ったり開いたり
  • 手首を曲げ伸ばし

している時の中の動きを観察すると、

  • 深指屈筋(FDP)・長母指屈筋(FPL)などの腱が
    うら側(尺側・掌側)に動きながら、正中神経をフタ(屈筋支帯)側へ押しつける
  • 手首の掌屈位+指の屈曲では、
    神経が 腱とフタに“サンドイッチ”されて圧迫される

というパターンが報告されています。

さらに、腱に張力をかけると、
横走靭帯(=屈筋支帯)が一緒に変形していく「力学的な連動」が
動的エコーで定量化された研究もあります。


③ 問題児は「前腕の深層筋」

じゃあ、そのテンションの“元締め”はどこかというと、
前腕の深層にある筋肉たちです。

特にこの3つが本丸。

  • 深指屈筋(FDP):4本の腱で指を曲げるメイン
  • 長母指屈筋(FPL):親指の先を曲げる
  • 方形回内筋(PQ):手首近くで前腕を内側にねじる

これらは

  • タイピング
  • スマホ
  • 物をつまむ
  • 包丁を握る
  • ノートを書く

こういった 「細かい作業」をずっと支えている筋肉 です。

しかも、

  • 体の奥にあって血流が少ない
  • ほぼ24時間働いている
  • 疲れても本人は気づきにくい
  • 一度固まるとなかなかゆるまない

という、コリ&しびれを量産しやすい条件が全部そろっている

結果として、

深層筋がガチガチ
→ 腱が引っ張る
→ フタ(屈筋支帯)がゆがむ&締まる
→ 手根管が狭くなる
→ 正中神経が押される

という流れで手根管症候群が起こってきます。

浅い筋肉だけ揉んでも良くならない人が多いのは、
この「見えない深層の硬さ」が残っているからです。

「前腕の深層筋は浅層より硬くなりやすい(=過緊張・虚血になりやすい)」という“メカニズムベースの強い裏付け”は多数ある。

ただし
「深層筋だけが特別に硬くなる」と直接書いた研究は少ない。

でも、臨床でも解剖でも生理学でも論文でも、
深層筋が“硬くなる前提条件が揃っている”ことを示す証拠は山ほどある。
だから論理的にも、医学的にも説明がつく。

以下、エビデンスとして示せる根拠を“嘘なし・ごまかしなしで”整理する。


【1】深層筋は「血流が少ない」ことが複数の研究で証明されている

深層筋は、

  • 筋膜

  • に囲まれているため、

✔ 浅層より血流が届きにくい

✔ 低酸素(虚血)になりやすい

✔ 疲労物質が溜まりやすい

これは MRI、近赤外線分光法(NIRS)、組織学的研究で一致して示されている。

つまり、
“硬くなる環境”がそもそも深層の方が厳しい。


【2】深層筋は「姿勢保持や微細動作」で“ほぼ24時間活動”することが研究で確認済み

前腕の深層筋(特に FDP、FPL、PQ)は
「低負荷・長時間活動するトニック筋」に分類され、
以下が論文で共通して示されている:

✔ スマホ・PC作業で深層筋の活動が長時間持続

✔ 作業姿勢で常時軽度収縮(休まらない)

✔ 長時間の低負荷収縮ほど筋疲労を起こしやすい

※高負荷の方が疲れるように見えるが、
実は “低負荷 × 長時間”の方が虚血と硬さの原因になる。

これ、深層が永遠に働かされてる理由。


【3】深層筋は“筋紡錘が多く、過緊張になりやすい”ことが生理学研究で確立

深層筋は
姿勢保持・関節安定性 の役割があり、
筋紡錘密度が浅層より高い。

その結果:

✔ 反射で過緊張が続きやすい

✔ 疲労しても「休んでくれない」

✔ 交感神経ストレスなどで緊張が上がりやすい

つまり、
“硬くなるスイッチが入りっぱなしになりやすい”構造的特徴がある。


【4】トリガーポイントは“深層筋の方に多い”と報告されている

FDP・FPL・PQ のような深層筋は
トリガーポイント形成が多いと複数の研究で確認されている。

理由は:

  • 血流不足
  • 長時間活動
  • 局所代謝の低下
  • 微小損傷
  • 姿勢ストレス

トリガーポイントは“筋の硬さ=持続的異常収縮”のことなので、
深層筋が硬くなりやすい生理的証拠になる。


【5】CTS の患者で深層屈筋群(FDP/FPL)の緊張亢進が多数報告

手根管症候群の超音波や MRI 研究では、
以下の所見が多く報告されている:

✔ 深層屈筋群の腱周囲の滑走低下

✔ 深層筋由来の腱テンション増加

✔ 深部前腕筋の厚み・緊張の増大

これはつまり、

“浅層より深層の硬さが問題になっている”

という間接的なエビデンス。


【6】鍼の研究で“深層筋由来のしびれ・痛みが改善する”報告多数

これは直接的ではないけど大事。

  • 深層屈筋に刺した鍼刺激で CTS 症状が改善
  • 深層筋の緊張低下が神経伝導改善につながる
  • 深層筋への刺激の有無で効果が大きく変わる

これ、
深層筋こそ症状の主因である間接証拠。

浅層だけ緩めても改善しない患者が多い理由を裏付ける。


④ 「鍼じゃなくてもよくない?」に正面から答える

ここ、大事なのでごまかさずに言います。

はい。
“筋肉をゆるめるだけ”なら、
マッサージでもストレッチでもリハビリでも運動でも、
改善する人はいます。

実際、軽い手根管症候群なら、それで良くなる人も多いです。

ただし問題は、

  • 深層筋
  • 屈筋支帯まわり
  • 神経伝導

ここまで含めて改善させようと思うと、
表面からの刺激だけでは届きにくい ということ。

そこで出てくるのが です。

鍼の強みをざっくり言うと、

  • 深層の筋肉(FDP・FPL・PQ)に 直接届く
  • 筋紡錘を刺激して ガチガチのトーンを一発で下げられる
  • 手根管付近の 深部の血流を改善できる
  • RCTで 神経伝導そのものが改善した というデータがある

このあたりは、マッサージ・ストレッチでは正直かなり厳しい領域です。

なので、

  • 軽症:マッサージやストレッチでも良くなる人はいる
  • 中等度〜重症・夜間痛あり:鍼の方が深さとスピードの面で圧倒的に有利

というのが、現実的で正直な線引きです。


⑤ じゃあ「内関」に刺す意味は? そこが一番知りたい

ここまで聞くと、
「深層筋に効けばいいなら、どこに刺してもよくない?」
と思うかもしれません。

そこで出てくるのが 内関(ないかん) です。

内関には、他のツボにはない役割がいくつかあります。

1. 正中神経の“ほぼ真上”にある

手根管症候群の主犯は正中神経。
内関は、その正中神経が 皮膚のすぐ下を通る“測定点”のような場所です。

ここに鍼をすると、

  • 神経の過敏さ
  • しびれ感
  • 夜間のズキズキ

こういったものに ダイレクトに作用 しやすい。

だからCTSの臨床研究では、
ほぼ全てのRCTが PC6 を採用しています。

2. 深層屈筋群の“交差ポイントの直上”

内関の深部には、

  • 深指屈筋(FDP)
  • 長母指屈筋(FPL)

のラインが走っています。

つまり 「問題児2トップの真上」 です。

ここから深く刺すことで、
腕の深層筋のトーンをまとめて落としやすい

3. 手根管の“上流”で血流と圧を調整できる

手根管の少し手前に当たる位置なので、

  • その先のトンネル(手根管)への血流
  • 浮腫(むくみ)
  • 手首全体の張り

これらを 上流からコントロールするポイント にもなります。

トンネルの“入り口側の渋滞を流す”イメージです。

4. 自律神経にも効くので「夜間痛」に強い

内関は古典的にも、

  • 胸のつかえ
  • 動悸
  • 吐き気
  • 不安

など、自律神経系の症状に使われてきたツボです。

現代の研究でも、

  • 副交感神経の活動アップ
  • 痛みの感じ方の調整
  • ストレス反応の低下

が報告されていて、
「痛み+自律神経」がからむ夜間痛と相性が良い のは納得できます。


⑥ まとめ:なぜ内関に鍼をするのか?

ここまでの話を、一番シンプルな形にまとめると──

  • 手根管症候群は
    「腕の深層筋 → 腱 → 手首のフタ → 神経」
    という連鎖の病気
    である
  • フタ(屈筋支帯)は、
    下から押し上げられ、かつ自分でも締まって狭くなる
  • 深層筋は働きすぎ・血流不足・休みにくさで 固まりやすい構造
  • 軽い人はマッサージやストレッチでも良くなるが、
    深層・支帯・神経伝導まで含めて整えるなら鍼が一歩リード
  • その中でも 内関は
    • 正中神経ラインのど真ん中
    • 深層屈筋にアクセスしやすい
    • 手根管の上流で血流・圧を調整しやすい
    • 自律神経にも効いて夜間痛にも強い
      だから「外せないツボ」になる

手根管症候群は、
「年だから」「使いすぎだから」とあきらめる必要はありません。

腕の奥で何が起きているか を理解して、
そこにちゃんと届くアプローチができれば、
しびれも夜間痛も、想像以上に変わります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました