なぜ脳卒中(脳梗塞、脳出血)に鍼灸なのか

― 頭皮鍼が「回復のスイッチ」に関わる理由 ―

「脳の病気なのに、なぜ鍼?」
「しかも頭に鍼をする意味は?」

これはもっともな疑問です。
結論から言います。

脳卒中後の回復は、筋肉より先に“脳の使われ方”が止まっている。
頭皮鍼は、そこに直接アプローチできる数少ない手段です。


脳卒中後に起きている本当の問題

脳卒中後、よくある状態は次の通りです。

  • 麻痺側を「使おうとしなくなる」
  • 動かそうとすると過剰に力が入る
  • 感覚がぼやけ、身体の位置が分かりにくい
  • 動かすイメージ自体が作れない

これは単なる筋力低下ではありません。
脳内ネットワークの再編がうまく進んでいない状態です。

つまり問題は
👉「筋肉」ではなく
👉 「脳がその部位を使う回路」


頭皮鍼とは何か?

頭皮鍼は、
大脳皮質の機能局在を意識して頭皮に刺激を入れる鍼法です。

  • 運動野
  • 感覚野
  • 前頭葉関連領域

これらに対応する頭皮部位を刺激し、
脳の活動性やネットワークの再編を促すことを目的とします。

重要なのは、
「ツボ」よりも
**「脳機能との対応関係」**を重視する点です。


頭皮鍼が脳卒中リハに向いている理由①

運動野・感覚野への“直接的な入力”

脳卒中後は、
麻痺側に対応する運動野・感覚野の活動が低下しやすい。

頭皮鍼は、

  • 皮膚刺激
  • 深部感覚
  • 痛覚入力

を通じて、対応領域に明確な入力を入れます。

これは
👉 「動かしなさい」と命令する前に
👉 脳を“目覚めさせる”刺激

運動学習のスタートラインを作ります。


頭皮鍼が脳卒中リハに向いている理由②

過剰な緊張・痙縮を“中枢側”から下げる

痙縮は、筋肉の問題ではありません。
中枢神経の抑制機構の破綻です。

頭皮鍼は、

  • 皮質レベルの興奮・抑制バランス
  • 感覚入力を介した運動出力の調整

に作用し、
「力が入りすぎる状態」を和らげる方向に働くことがあります。

結果として
👉 動かそうとした瞬間の抵抗が減る
👉 リハビリの質が上がる


頭皮鍼が脳卒中リハに向いている理由③

「使わない脳」を再び使わせる

脳卒中後に起きやすいのが
learned non-use(学習性不使用)

  • どうせ動かない
  • 失敗する
  • 疲れる

この経験が積み重なり、
脳はその部位を「使わない選択」をします。

頭皮鍼は、

  • 麻痺側への注意を向けさせる
  • 感覚・運動の再マッピングを助ける

結果、
👉 「使ってもいいかもしれない」状態を作ります。

これは、
CI療法や課題指向型訓練とも非常に相性が良い。


重要な誤解

頭皮鍼だけで回復するわけではない

ここは断言します。

❌ 頭皮鍼=脳が治る
❌ 鍼を打てば麻痺が消える

そんな都合のいい話はありません。

頭皮鍼の役割は
回復を“起こしやすい状態”にすること

その後に

  • 反復練習
  • 生活動作への応用
  • 使用頻度の増加

これをやらなければ、意味は薄れます。


なぜ「頭皮鍼 × リハビリ」なのか

脳卒中回復に必要なのは、

  1. 脳を使える状態にする(頭皮鍼)
  2. 正しい動きを経験させる(リハビリ)
  3. 生活で使わせ続ける(定着)

頭皮鍼は①、
リハビリは②③。

役割が完全に分かれているから、組み合わせる意味がある。


まとめ

脳卒中後の回復は、
「筋肉を鍛える話」ではありません。

  • 脳が
  • その部位を
  • もう一度使うかどうか

この再学習の問題です。

頭皮鍼は、
脳に再びスイッチを入れるための刺激

そしてそのスイッチを
本当の回復につなげるのが、リハビリです。

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