痛い場所が“原因”とは限らない

疼痛

― Regional Interdependence Model が変えた臨床の常識

2007年、理学療法の世界で評価の考え方をひっくり返す論文が出ました。
それが Regional Interdependence Model

提唱したのは
Robert S. Wainner ら。

このモデルが言っているのは、かなりシンプルです。

「症状が出ている部位と、原因の部位は別かもしれない」

でも、この一文の意味はめちゃくちゃ重い。


痛みは“現場”、原因は“別の場所”

多くの人はこう考えます。

👉 肩が痛い → 肩が悪い
👉 腰が痛い → 腰が壊れてる
👉 膝が痛い → 膝に問題がある

Regional Interdependenceはこれに待ったをかけます。

実際の臨床ではこういうケースが山ほどある:

  • 肩の痛み ← 胸椎の硬さ
  • 膝の痛み ← 股関節の安定性低下
  • 腰痛 ← 足部のアーチ崩壊
  • 首の痛み ← 肩甲帯の制御不良

つまり、

痛い場所=被害者
原因=離れた場所の加害者

現場に犯人はいないタイプの事件。

局所だけ治療しても再発する理由はここにあります。


これは“連鎖”の話ではない

誤解されやすいけど、このモデルは

👉 「全部つながってるよ〜」

というスピリチュアルな話ではない。

本質はもっと臨床的です。

評価範囲を広げろ

これだけ。

痛みがある部位だけ触るのは不十分。
遠隔部位も含めて評価しろ、という診断戦略。


身体はネットワークで動いている

人間の動きは単関節では成立しません。

歩く
座る
持ち上げる
振り向く

全部、全身協調。

だから一部が崩れると、
別の場所が代償する。

その代償が限界を超えた時に
“症状”として表面化する。

痛みは壊れた場所のサインというより、

👉 システムの破綻の最終結果

です。


このモデルが臨床をどう変えたか

① 局所治療の限界が明確になった

マッサージ
ストレッチ
電気
注射

局所アプローチは短期的には効く。

でも原因に触れていなければ戻る。

Regional Interdependenceは
「なぜ戻るのか」を説明したモデル。


② 動作評価が中心になった

構造だけでなく、

  • 運動制御
  • 姿勢戦略
  • 感覚入力
  • 神経系の適応

まで含めて診る必要がある。

“部位”ではなく
“システム”を見る視点


③ 痛みの理解がアップデートされた

痛み = 組織損傷

という単純モデルでは説明できない症例が多い。

このモデルは、

👉 痛みをネットワーク現象として扱う

現代的な視点への橋渡しになった。


臨床での実践イメージ

例えば膝痛の人を診るとき:

❌ 膝だけ評価
⭕ 股関節・足部・体幹も見る

肩の痛みなら:

❌ 肩だけ
⭕ 胸椎・頸椎・肩甲帯まで含める

「遠回り」に見える評価が
実は最短ルート。


原典論文

Regional Interdependence: A Musculoskeletal Examination Model Whose Time Has Come
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2007

タイトルからして強気。
“今こそ必要なモデルだ”と言い切っている。

そして実際、その通りになった。

今ではスポーツ・整形分野では
ほぼ標準的な思考枠組み。


まとめ

身体は孤立した部品の集合ではない。

症状は点で出る。
原因は線や面で存在する。

だから評価も治療も
“広く見る”必要がある。

これを正式な臨床モデルとして言語化したのが
Regional Interdependence。

2007年に出た論文だけど、
今読んでも普通に最前線。

むしろここを理解していないと
評価はいつまでも局所止まり。

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