胸の「筋膜」が体全体につながっている

筋肉

【中編】胸の筋膜は首・お腹・背中ともつながっている

前編のおさらい

前編では、筋膜が「全身をつなぐ薄い膜」であること、胸の筋膜(胸筋筋膜)が3層に分かれていることをお伝えしました。

中編では「胸の筋膜が首・お腹・背中とどうつながっているか」を、身近なたとえをまじえて解説します。

胸の筋膜は首ともつながっている

なぜ胸が硬くなると首も張るの?

胸の筋膜の上部は、首の筋膜とそのままつながっています。テントのロープをイメージしてください。テントの布(=筋膜)が一枚でつながっているとき、どこかのロープを強く引っ張ると布全体がゆがみます。

胸の筋肉(大胸筋・小胸筋)が縮んで硬くなると、首の筋膜も引っ張られ、首のこわばりや頭が前に出やすい姿勢につながります。

よくある症状のつながり例

・胸の筋膜が硬い → 首が前に引っ張られる → 首コリ・頭痛

・胸が縮む → 顎が前に出る姿勢 → 飲み込みにくさ(嚥下への影響)

リハビリでの意味

脳卒中後に飲み込みにくさ(嚥下障害)がある方では、首まわりの筋肉が緊張しやすく、その緊張が胸の筋膜と連動しているケースがあります。胸の筋膜をやわらかくするアプローチが、結果として首の動きや飲み込みやすさの改善に役立つことがあります。

胸の筋膜はお腹・骨盤ともつながっている

「みぞおちの下」でお腹の筋膜とつながる

胸の筋膜の下端(みぞおちあたり)はお腹の筋膜(腹直筋鞘)へとつながっています。さらに、体の対角線上——右の胸から左のお腹へ——という経路でもつながっています。

これは「体をひねるとき」に使われる筋膜の経路です。歩くときに自然に体がひねられますが、あの動きを支えているのがこの経路です。

よくある症状のつながり例

・麻痺側の胸の筋膜が硬い → 体幹のひねりが減る → 歩くとき腕が振れない

・胸が前に縮む → お腹の筋膜も引っ張られる → 腹圧がかかりにくくなる

骨盤・お尻の筋肉とも連結

さらに下方では、お尻の大きな筋肉(大殿筋)の筋膜とも連結しています。「胸→お腹→骨盤→お尻」という長いつながりが存在するため、胸の筋膜の硬さが立位の安定性や歩行にまで影響することがあります。

胸の筋膜は背中ともつながっている

前と後ろで胸郭を「はさむ」構造

胸の筋膜(前面)は、背中の広背筋・僧帽筋の筋膜ともつながっています。前から後ろへ、胸郭を取り囲むように筋膜が走っているのです。

このつながりにより、前面の筋膜が硬くなれば背中の動きも制限され、逆に背中の緊張が胸の筋膜を引っ張ることもあります。

腰・骨盤まで続く「後ろのライン」

背中の広背筋は腰の深い筋膜(胸腰筋膜)とつながり、さらに骨盤帯へと続きます。つまり、胸の筋膜 → 広背筋 → 腰の筋膜 → 骨盤という、背中全体を縦断する長いラインが存在します。

脳卒中後に麻痺側の体幹が傾いたり、骨盤が後ろに引けてしまうのは、この後ろのラインの左右差が影響していることがあります。

中編のまとめ

  • 胸の筋膜は首の筋膜とつながり、首コリや姿勢に影響する
  • みぞおちの下でお腹の筋膜につながり、体幹のひねりや歩行を支える
  • 背中の筋肉を通じて腰・骨盤まで続くラインがある
  • 胸の筋膜の硬さが「離れた場所の症状」を引き起こすのはこのため

後編では「胸の筋膜と腕のつながり」と「リハビリでどんなことをするのか」をわかりやすく解説します。

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