胃経編①:顔のツボを制す者は美容を制す

美容鍼

―― 美容鍼の真髄は“表情筋の血流”にあり ――

「美容鍼ってほんとに効くの?」
患者さんから、いちばん聞かれる質問の一つです。
答えは――効きます。ただし、やり方次第で“別物”になる。

今回は、美容鍼の中でも特に重要な“顔の胃経ライン”に注目。
承泣(しょうきゅう)・四白(しはく)・地倉(ちそう)など、
顔面部のツボがどんなメカニズムでリフトアップやむくみ改善に働くのかを、科学的に解き明かします。


胃経は「表情」と「循環」をつなぐライン

胃経(いけい)は、体の前面を走る経絡で、
目の下(承泣)→頬(四白)→口角横(地倉)→首→胸→腹→脚へと続きます。

この流れ、よく見ると「表情を作る筋肉ライン」と重なっています。
つまり胃経は、表情筋の動き・血流・リンパの流れと密接にリンクしている。

だから、胃経上の顔のツボに鍼をすると――
筋の過緊張がゆるみ、血流が回復し、顔色が明るくなる。
これが美容鍼の“物理的・生理学的”な根拠です。


👁️ 承泣(しょうきゅう) ― 目の下のクマ・むくみに

承泣は、瞳の真下、眼窩のすぐ下のくぼみ。
ここには眼輪筋の下縁と、眼静脈・顔面動脈の分枝が走ります。

目の疲れ、クマ、むくみ。
これらは血流とリンパの滞りで起こるもの。
承泣を刺激すると、眼周囲の血流量が上昇することが研究で確認されています。

参考エビデンス:

美容鍼による眼周囲血流変化を測定した研究(日本美容鍼灸学会誌, 2019)では、承泣・四白への刺鍼後に皮下温上昇と毛細血管拡張が観察されました。

つまり、クマやむくみが“消える”のではなく、“流れる”。
体の循環が整えば、自然に明るく見えるんです。

なぜ効果を生み出すか:3つの視点

■ 解剖・生理学的背景

承泣は瞳孔の真下、眼窩下縁のくぼみに位置する。
すぐ下には眼輪筋・下斜筋があり、周囲を眼窩下動脈・静脈、眼窩下神経(上顎神経の枝)が走る。
この領域は眼周囲の血液・リンパ還流のボトルネックでもあり、静脈うっ滞が生じやすい部位。

鍼刺激により局所の血管拡張(NO産生増加)と筋緊張緩和が起こることで、
眼周囲血流量が増加し、クマ・むくみ・眼精疲労の改善が起こる。
実際、眼窩下部への鍼刺激で皮下温上昇を確認した報告がある(日本美容鍼灸学会誌, 2019)。

■ 神経学的メカニズム

眼窩下神経への軽刺激は、三叉神経系を介して中枢性血流調整・鎮痛反射を誘発。
これにより眼疲労、涙液循環、自律神経調整(副交感神経優位化)が生じる可能性がある。

■ 東洋医学的解釈

承泣は“涙を受ける所”と記され、
古典的には「目の病、涙目、視力減退」を治すツボ。
“上焦の滞りを開く”という働きを持ち、
現代的に言えば「顔面上部の循環改善」を目的とする。


四白(しはく) ― 頬のたるみと表情の固さに

四白は、瞳の真下から指1本半ほど下。
上顎骨に沿ったくぼみで、上唇挙筋や頬骨筋群の起始付近。

ここが硬くなると、頬が下がり、口角が引き上がりにくくなる。
逆にここをゆるめると、筋肉の“張り”が戻って自然な笑顔が作りやすくなる。

研究的にも、四白への鍼刺激が局所の筋酸素化・血流増加を促すことが報告されています(鍼灸OSAKA, 2020)。
つまり、単なる“リフトアップ”ではなく、筋代謝の改善こそが真の狙いです。

なぜ効果を生み出すか:3つの視点

■ 解剖・生理学的背景

瞳孔直下の眼窩下孔付近。
眼輪筋・上唇挙筋・頬骨筋群が交わり、眼窩下神経・動静脈が通過する。
表情筋の緊張がここで集中しやすく、顔の“こわばり”や“たるみ”の起点になりやすい。

鍼刺激により、

  • 筋膜リリース的効果(筋線維の滑走改善)
  • 微小循環改善
  • 局所代謝の促進(近赤外分光計で筋酸素化上昇の報告あり/鍼灸OSAKA, 2020)
    が起こるとされる。
    その結果、頬部の張り改善・表情の柔軟性回復・皮膚温上昇が観察される。

■ 神経学的メカニズム

上顎神経枝への刺激により三叉神経節が賦活され、
中枢の血管運動中枢(延髄・橋レベル)を介して顔面血流の再分配が起こる。
同時に、顔面神経系の筋出力バランスが整うことで、左右非対称や筋緊張差の緩和にも寄与。

■ 東洋医学的解釈

「四白」は“四方を明るく照らす”の意。
東洋医学的には“陽気を顔面にめぐらす”働きを持ち、
“顔色を明るくし、眼を明らかにする”ツボとされている。
つまり、局所の循環だけでなく、上半身の気血の滞りを解くポイントとしても使われる。


地倉(ちそう) ― 口角と消化をつなぐツボ

地倉は口角の外側、笑ったときにできるえくぼの外側付近。
咀嚼筋群(大頬骨筋・口角挙筋)に近く、顔の中でも“消化器系”と関係が深いツボです。

このツボの面白いところは、
“胃”の経絡にありながら、「口」=消化の入り口にも関わること。
実際、地倉刺激によって唾液分泌量が増加した報告もあります(日本鍼灸良導絡医学会誌, 2017)。

つまり、顔のツボを使って「消化・代謝」を底上げすることもできる。
美容鍼が“健康美容”である所以です。

なぜ効果を生み出すか:3つの視点

■ 解剖・生理学的背景

口角外方、口輪筋と頬筋の交点付近。
この領域は上唇動脈・顔面動脈の分枝が豊富で、咀嚼・発声・表情に関与する多数の筋が重なり合う。
口元の筋群(大頬骨筋、口角挙筋、口角下制筋など)は、加齢やストレスで容易に過緊張または弛緩を起こす。

地倉への鍼刺激は、

  • 口輪筋・頬筋の緊張を整え、口角の動きを滑らかにする
  • 顔面動脈系の血流を促進し、局所代謝を改善
  • 三叉神経(下顎枝)および顔面神経末端の興奮を調整
    といった作用があり、口角の下がり・ほうれい線・表情硬化の改善が臨床的に報告されている。

また、唾液腺への副交感神経反射を介して唾液分泌量増加が起こるという研究もある(日本鍼灸良導絡医学会誌, 2017)。

■ 神経学的メカニズム

顔面神経(運動)と三叉神経(感覚)の交錯領域であり、刺激により
中枢反射経路を介した筋トーン正常化・自律神経バランス回復が期待される。
これが「口角の自然な引き上がり」「顔のリラックス感」につながる。

■ 東洋医学的解釈

地倉は「地=体の基盤」「倉=蓄える」の意。
“口は気血の入り口”とされ、飲食・言葉・表情の全てを司る。
地倉はこの“入口”を調えるツボとして、
内臓と外見の調和(内外相応)を象徴する経穴である。


美容鍼は「神経反射療法」

顔面には三叉神経が密集しており、その枝が表情筋・血管・皮膚を支配しています。
鍼でこの神経を軽く刺激すると、脳幹(延髄・橋)の反射経路を介して自律神経が整う。

結果として、
・血流が良くなる
・むくみが取れる
・副交感神経が優位になってリラックスする
――という全身反応が起こります。

つまり、美容鍼の効果は「顔だけに留まらない」。
“中から整える美容法”なんです。


🌿 まとめ

  • 胃経は顔面の表情筋・血流と深く関係する。
  • 承泣:目の下のむくみ・血流改善。
  • 四白:頬のたるみ・筋代謝改善。
  • 地倉:口角の下がり・唾液分泌促進。
  • 美容鍼は、神経反射を利用した“全身を整える美容”。

リハりんより

リハりんでは、体の“動き”と“流れ”を整える治療を行っています。
鍼でめぐりをつくり、リハビリでその動きを定着させる。
自然に深呼吸できる体へ――それがリハりんの目指すケアです。

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