―― 腕の“詰まり”をどう流すか ――
「腕がだるい」「手がしびれる」「肩まで張る」――
そんな症状を訴える人の多くは、腕の外側ラインに“詰まり”があります。
そのルートこそが、大腸経。
肩こりや五十肩、テニス肘、手のしびれ。
これらは筋肉だけの問題ではなく、“経絡の通り”が悪くなっているケースが多い。
今回は、曲池(きょくち)・手三里(てさんり)・肩髃(けんぐう)という3つのツボを中心に、
腕から肩へと流れを作る方法を解説します。
曲池(きょくち) ― “排水口”のようなツボ
まずは大腸経の要、曲池。
肘を曲げたときにできるシワの外端(親指側)のくぼみにあります。
このツボは、まさに「詰まりを抜く場所」。
古典でも“熱を清す”とされ、現代的に言えば炎症や循環の滞りを改善するポイントです。
肘の外側には、橈側手根伸筋群や上腕筋など、手首・指を動かす筋肉が密集しています。
デスクワークやスマホでここの筋肉がこわばると、肘や肩まで引っ張られ、
結果として「腕が重い・しびれる」という感覚に。
曲池を押すと、腕全体の血流がスーッと流れるように軽くなることがあります。
この感覚はまさに、“排水口の詰まりが抜ける”瞬間に似ている。
鍼や指圧でも、ここが開くと腕全体が温かくなるほど変化が出やすいツボです。
・「遠隔部経穴への鍼刺激が眼循環動態に及ぼす影響」では、曲池・合谷などを刺鍼した群で血流速度増加、血管抵抗低下が認められています。 ・ただし、五十肩・肩関節痛に対する厳密なRCT(無作為化比較試験)というレベルでは限定されており、「可能性が示唆されている」レベル。
手三里(てさんり) ― 「手の三里」は働き者のツボ
曲池から手首方向に向かって、指3本分下(約2寸)。
そこが手三里。名前の通り、足三里の“手版”のような存在です。
このツボは、腕のだるさ・しびれ・手指のこわばりに効果的。
前腕の筋肉(特に橈側手根伸筋)に密着していて、
長時間のPC作業やスマホ操作でカチカチになりやすいポイントです。
手三里を押すと、前腕の緊張がふっと抜けて、
「指が軽く動く」「肩まで楽になった」と感じることが多い。
それは筋膜ラインを通じて、肘〜肩までの張りが一気に解けるからです。
また、消化器にも関係するツボとして知られており、
「手三里で胃が整う」というのも、実は自律神経を通した反射によるもの。
腕の緊張をゆるめることで、体全体が“休息モード”に入るんですね。
「日本鍼灸エビデンスレポート(EJAM)」において、手三里穴への鍼刺激が視力・眼疲労に影響を及ぼしたというランダム化比較試験が記録されています。 厚生労働省eJIM「統合医療」情報発信サイト
ただし、「腕のしびれ・肩こり・上肢痛」に対する直接の大規模エビデンスは少ない。
肩髃(けんぐう) ― 肩関節の“出口”
肩を軽く横に上げたとき、肩の前側にできるくぼみ。
そこが肩髃。三角筋の前縁と鎖骨の前部が交わる場所です。
ここはまさに腕の流れの出口。
大腸経は、指先から腕を通り、最終的に肩・首・顔面へと抜けていきます。
肩髃で“滞り”があると、腕全体の血流もリンパも戻りにくくなり、
「肩が重く、手が冷える」状態になります。
このツボをゆるめると、肩甲骨がスッと下がり、
胸が開くような姿勢変化が起きる。
鍼灸では肩関節痛・五十肩の基本治療点です。
直接「肩髃」のみに焦点をあてた公開されたRCTデータは少ないという現状です。
「肩関節周囲炎に対する鍼通電療法」のレビューでは、鍼灸刺激そのものが「疼痛緩和・可動域改善」に有効であることが報告されています。
リハビリ×鍼灸の視点から
理学療法の観点では、上肢痛は「過使用」と「不使用」の両極で起こります。
大腸経ラインの緊張は、まさにそのバランス崩壊のサイン。
曲池〜手三里:前腕の過緊張(握りすぎ・支えすぎ) 肩髃:肩の固定・すくみ上がり
鍼でラインを緩め、
リハで可動域と筋バランスを整える。
この二段構えが「再発しない腕の治療」になります。
🌿 まとめ
曲池:炎症や詰まりを抜く排水口。 手三里:前腕の緊張を解き、全身を整える。 肩髃:腕の流れの出口で、肩こり・五十肩にも有効。 3点を“線”でとらえると、腕から肩が軽くなる。

