【第1回】鍼がホルモンを整える理由①

ホルモン

― 視床下部‐下垂体‐卵巣(HPO軸)への作用 ―

そもそもHPO軸って何?

ホルモンのリズムを作っている“司令回路”のこと。

  • Hypothalamus(視床下部)
  • Pituitary(下垂体)
  • Ovary(卵巣)

この3つがリレーのように働き、
エストロゲン・プロゲステロン・LH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)などを調整して
「月経周期」「排卵」「気分」「体温」をコントロールしている。


🧠 脳がホルモンを決めている

ホルモンって“女性ホルモン=卵巣が出してる”と思われがちだけど、
実は上流にいるのは脳の視床下部

この視床下部が「いま出せ」「もう止めろ」と指令を出す。
そのスイッチを押す刺激の一つが――だ。


鍼刺激で起きること

鍼刺激(特に三陰交太衝など)で皮膚や筋の神経受容器が反応すると、
求心性神経がその信号を脊髄 → 視床下部へ送る。

視床下部では以下のような連鎖が起きる:

  1. 鍼刺激 → 神経入力 ↑
  2. 視床下部のβ-エンドルフィン分泌 ↑
  3. その結果、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)のリズムが調整される
  4. 下垂体が出すLH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)が整い、
  5. 卵巣のエストロゲン・プロゲステロン産生が安定

つまり、鍼は“ホルモンの司令塔”を再チューニングするわけ。


研究で分かっていること

研究対象結果
Stener-Victorin et al., Am J Physiol 1999PCOSラット電気鍼でβ-エンドルフィン↑、LH過剰分泌が正常化
Johansson et al., Fertil Steril 2013排卵障害女性鍼でLH/FSH比が正常化、排卵率上昇
Liu et al., Front Neurosci 2018fMRI研究鍼刺激後、視床下部の血流・神経活動が安定化

つまりどういうこと?

生理前や更年期に「気分が乱れる」「周期がズレる」のは、
視床下部がホルモンのリズムを上手く制御できていない状態

鍼はこの視床下部に“再起動信号”を送るような働きをし、
全体のホルモンリズムを滑らかに戻してくれる。


💬まとめ

  • HPO軸=ホルモンの司令塔ネットワーク
  • 鍼刺激は視床下部に届き、ホルモン放出のリズムを整える
  • 結果、月経周期・排卵・気分の波が安定する
  • 特に三陰交・太衝・気海などが有効

リハりんより

PMS・排卵障害・更年期など、ホルモンに関係する症状には
「体の外からホルモンを入れる」よりも、
「体の中の司令塔を整える」ほうが自然で副作用が少ない。

鍼はまさに“中枢から整えるスイッチ”です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました