~「どの部位が壊れたか」ではなく、「どこを活かすか」~
はじめに
脳卒中のリハビリでは、「どの筋肉を動かすか」よりも前に、
**「どの脳の部位が指令を出しているか」**を理解することが大切です。
脳は単なる“配線の束”ではなく、経験・学習・感情までも統合して動きを作る精密なオーケストラです。
大脳の基本構造
大脳は左右2つの半球に分かれています。
その表面には「大脳皮質」というシート状の神経層があり、
前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉という4つの領域に分けられます脳卒中理学療法の理論と技術。
それぞれの主な役割は以下の通りです。
| 脳の部位 | 主な働き | リハビリで意識すべきポイント |
|---|---|---|
| 前頭葉 | 運動の企画・実行、意思決定 | 「動かそう」と思う力を引き出す |
| 頭頂葉 | 感覚統合、身体認識 | 触覚や位置感覚の再教育 |
| 側頭葉 | 聴覚・言語・記憶 | コミュニケーションの理解支援 |
| 後頭葉 | 視覚処理 | 空間把握や歩行時の安全確認に関与 |
つまり「手を動かす」動作一つ取っても、
前頭葉が“意図”を立て、頭頂葉が“身体位置”を認識し、
側頭葉が“音や指示”を理解し、後頭葉が“視覚情報”を補う──。
このチームプレーが動作です。
リハビリでの臨床応用
脳卒中である領域が損傷しても、
他の領域が代償・再構築する(可塑性)ことが知られています。
理学療法士の仕事は、単に筋肉を鍛えることではなく、
「脳に再び“正しい情報”を学ばせる」こと。
たとえば、
- 前頭葉損傷での運動発現低下 → “動作の意図づけ”を強調する課題設定
- 頭頂葉損傷での感覚低下 → “感覚入力(タッピングやブラッシング)”の強化
- 側頭葉損傷での理解低下 → “視覚提示+短文指示”で代償
- 後頭葉損傷での視覚失認 → “音や触覚情報”を活かしたリハ展開
つまり、「壊れた場所を治す」ではなく、「残った場所を活かす」。
これが現代の脳卒中リハの考え方です。
まとめ
脳卒中リハビリは、“筋トレ”ではなく“脳トレ”。
どの部位が壊れたかではなく、
「今、どの神経ネットワークを活かすか」を考えることで、
同じ訓練でも成果はまったく違ってきます。
🌿リハりんより
リハりんでは、オーダーメイドリハを提供しています。
脳を理解し、身体を動かし、“生きる力”を再びつなぐ。
それが、私たちの理学療法です。
📘参考文献:
原 寛美(監修)『脳卒中理学療法の理論と技術(第3版)』文光堂,2013年.
※本記事は上記文献および最新の研究・臨床知見を参考に、リハりん(自費リハ×鍼灸)独自の解釈でまとめています。
内容は医療専門職の知見に基づいていますが、個々の症状に応じた医療的判断は主治医・専門家の指示に従ってください。
© 2025 リハりん(自費リハ×鍼灸) | 監修:金野広大(脳卒中認定理学療法士/鍼灸師)


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