今回は、右脳に出血を起こし、左半身に麻痺や感覚障害が出た高齢の患者さんの回復期リハビリの事例をご紹介します。
入院時の状況
発症から数か月後に回復期リハビリ病棟に入院されました。
左半身の動きや感覚はほとんど失われ、寝返りや起き上がり、立ち上がりなど日常動作はすべて介助が必要な状態でした。
さらに、左半側空間無視や注意障害などの高次脳機能障害もありました。
非麻痺側の筋力も低下しており、全身的な廃用症状が見られました。
リハビリの方針
短期目標は「離床時間を増やして脳の活動を促すこと」、
長期目標は「寝返り・起き上がり・立ち上がり・移乗などの日常動作を軽介助で行えるようになること」に設定しました。
入院後、装具を活用した下肢の安定練習を中心にリハビリを開始しました。
最初は立位時に足が内側に傾き、移乗などの介助量もなかなか減らない状況でしたが、装具を両足に適切に使用することで安定した立位が可能になりました。これにより、立ち上がりや移乗の介助量も大幅に減少しました。
リハビリの成果
退院時には以下の改善が見られました。
- 日常動作(ADL):寝返り・起き上がりは中等度介助、立ち上がり・移乗は軽介助で可能
- 座位保持:見守りで安定
- コミュニケーション:新聞や雑誌に集中して読んだり、自発的に感謝を伝える場面も
離床や装具を使った立位練習が、自力で体を支える感覚と自信を取り戻す大きなきっかけとなりました。
考察
この症例では、脳の広範囲に出血があり重度の麻痺や感覚障害がありました。
特に「装具を使った非麻痺側の立位練習」がポイントで、これにより姿勢保持が改善し、日常動作の介助量も減少。患者さんにとって大きな「自立の一歩」となりました。


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