脳トレより筋トレ?筋トレは認知症予防につながるのか

認知

「認知症を予防するためには、脳トレをした方がいい」

そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

計算問題を解いたり、パズルをしたり、間違い探しをしたり。

もちろん、頭を使うことは大切です。

しかし近年では、認知機能を維持するためには「頭を使うこと」だけではなく、身体を動かすことも重要なのではないかと考えられています。

その中でも注目されているのが、ウォーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングです。

では、

筋トレをすると、本当に認知症予防につながるのでしょうか?

2026年に発表された複数のシステマティックレビュー・メタ解析から考えてみます。

2026年の研究では、運動方法によって効果に違い

2026年4月、Scientific Reportsに、認知機能低下のある高齢者に対する運動の効果を検討したシステマティックレビュー・メタ解析が発表されました。

対象となったのは、軽度〜中等度の認知機能低下または認知症のある高齢者です。

14件のランダム化比較試験、合計1,097人について、

・有酸素運動
・筋力トレーニング
・有酸素運動+筋力トレーニング

の効果が比較されました。

その結果、運動の種類によって少し異なる特徴がみられました。

有酸素運動

主に認知機能の改善と関連。

筋力トレーニング

主に筋力や身体機能の改善と関連。

有酸素運動+筋力トレーニング

認知機能と筋機能の両方に改善がみられました。

つまり、

「認知機能なら有酸素運動、筋力なら筋トレ」と完全に分かれるわけではありませんが、それぞれ得意な領域がある可能性がある

ということです。

ただし、この研究では多くの評価項目でエビデンスの確実性が「低〜非常に低い」とされているため、結果をそのまま断定的に解釈することはできません。

では、筋トレは脳にはあまり意味がない?

ここは誤解しやすいところです。

先ほどの研究だけを見ると、

「筋トレは筋肉には効くけれど、認知機能にはあまり効かないのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、そう単純ではありません。

2026年7月に発表された別のネットワークメタ解析では、軽度認知障害(MCI)のある高齢者を対象とした74件のランダム化比較試験、合計5,578人が解析されています。

この研究では、

・有酸素運動
・筋力トレーニング
・太極拳やヨガなどのマインド・ボディ運動
・複合運動
・デジタル・VRを利用した運動
・認知トレーニングとの組み合わせ

など、さまざまな介入方法が比較されました。

その結果、筋力トレーニングは、認知症や認知機能障害の評価に使用されるADAS-Cogの改善と関連していました。

しかも、この結果についてはエビデンスの確実性が「high」と評価されています。

つまり現在の研究からは、

筋力トレーニングは筋肉だけではなく、認知機能にも良い影響を与える可能性がある

と考えることができます。

さらに2026年の研究では「複合運動」が注目

2026年7月には、MCIのある人を対象とした別のネットワークメタ解析も発表されています。

55件のランダム化比較試験、4,603人を解析した結果、運動を行うグループは、運動を行わない対照群と比較して、全般的な認知機能に良い結果を示しました。

その中でも、複数の運動を組み合わせる多要素運動(multicomponent exercise)が、全般的認知機能について高く評価されています。

また、筋力トレーニングは実行機能に対して高くランクされました。

実行機能とは、

・物事の計画を立てる
・順序立てて行動する
・状況に合わせて行動を切り替える
・注意をコントロールする

といった、日常生活に欠かせない認知機能です。

つまり、「筋トレは脳に意味がない」という考え方は、現在の研究を見る限り適切ではありません。

なぜ身体を動かすと認知機能にも影響するのか?

運動が認知機能に良い影響を与えるメカニズムは、一つだけではありません。

運動によって、

・脳血流の改善
・心肺機能の改善
・神経可塑性に関係する物質への影響
・代謝機能の改善
・炎症の抑制
・睡眠の改善
・抑うつやストレスの軽減

など、さまざまな変化が起こる可能性があります。

さらに、高齢者の場合は「身体機能を維持すること」そのものにも大きな意味があります。

筋力が低下する

歩くことが大変になる

外出が減る

人との交流が減る

身体活動や社会的刺激が減る

このような悪循環に入ってしまえば、認知機能にも間接的な影響が及ぶ可能性があります。

その意味でも、筋肉を維持することは「単に足腰を強くする」だけの話ではありません。

どんな筋トレをすればいい?

今回のScientific Reportsのレビューに含まれた筋力トレーニング研究では、主に週2回程度のプログラムが用いられていました。

ただし、

「週○回、○分行えば認知症を予防できる」

という明確な運動量が決まっているわけではありません。

そのため、特に高齢者では、その人の身体能力や持病、転倒リスクなどを考慮して行う必要があります。

一般的には、

・椅子からの立ち座り
・スクワット
・かかと上げ
・ゴムバンドを使った運動
・軽い重りを使った運動

なども筋力トレーニングになります。

大切なのは、最初から強い運動をすることではありません。

安全に続けられる負荷から始め、徐々に負荷を上げていくこと

が重要です。

筋トレだけやればいいわけではない

ここも非常に重要です。

最新研究を見ると、筋力トレーニングにも認知機能への効果が期待できます。

しかし、

「認知症が心配なら筋トレだけしていればいい」

という結論にはなりません。

むしろ2026年の研究を総合すると、

・筋力トレーニング
・ウォーキングなどの有酸素運動
・バランス運動
・複数の運動を組み合わせた運動

などを組み合わせることが、認知機能と身体機能を幅広く維持するうえで合理的と考えられます。

「筋トレすれば認知症にならない」は間違い

ここははっきり分けて考える必要があります。

今回紹介した研究から、

「筋トレをすれば認知症を予防できる」

と断言することはできません。

なぜなら、今回中心的に紹介した研究の多くは、

・軽度認知障害(MCI)
・すでに認知機能が低下している高齢者
・認知症のある高齢者

を対象としているためです。

つまり、

健康な人が筋トレを続けることで、将来の認知症発症率がどれだけ低下するのか

を直接証明した研究ではありません。

したがって、現在の科学的根拠から正確に表現するなら、

「筋力トレーニングを含む運動は、高齢者の認知機能や身体機能の維持・改善に役立つ可能性がある」

となります。

「筋トレ=認知症予防」と言い切ってしまうと、少し話を盛りすぎです。

脳トレより筋トレ?

タイトルでは、

「脳トレより筋トレ?」

としました。

ただ、本当に重要なのは「どちらが上か」を決めることではありません。

認知機能を維持するためには、

頭を使う

筋肉を使う

歩く

人と関わる

こうした活動を組み合わせていくことが大切です。

特に高齢になるほど、

「筋力が落ちたから外出しない」
「歩けないから人と会わない」
「活動する機会が減る」

という状態を防ぐことには大きな意味があります。

認知症対策というと、つい「脳に何をするか?」だけを考えてしまいがちです。

しかし、脳と身体は別々に存在しているわけではありません。

脳を元気に保ちたいなら、身体も動かす。

これはかなり重要な考え方です。

まとめ

2026年に発表された複数のシステマティックレビュー・メタ解析では、運動が認知機能に良い影響を与える可能性が示されています。

筋力トレーニングについても、

・筋力の改善
・身体機能の改善
・一部の認知機能の改善

が報告されています。

一方で、

「筋トレをすれば認知症を予防できる」

と断言できる段階ではありません。

現時点では、

有酸素運動や筋力トレーニングなど、複数の運動を継続的に行うことが、認知機能と身体機能を維持するための有力な方法の一つ

と考えるのが妥当でしょう。

「脳のために脳だけ鍛える」のではなく、

身体を動かすことも、脳を守るための大切な習慣。

これが現在の研究から読み取れる重要なポイントです。

参考文献

Choe YH, Cho EJ, Choi Y, et al. Effects of exercise modalities on cognitive and muscle function in older adults with cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2026;16:19319.

Liu BY, Zhuang CK, Ruan H. Comparative efficacy and certainty of evidence of exercise interventions for cognitive outcomes in older adults with mild cognitive impairment: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials. Frontiers in Aging Neuroscience. 2026;18.

Exercise modalities in mild cognitive impairment: a systematic review and network meta-analysis of comparative effectiveness. Frontiers in Aging Neuroscience. 2026.

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