腰痛のMRIで「Modic変化」が見つかった場合、
「運動を続ければ、このMRIの変化も元に戻るの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、
運動によって症状が改善しても、Modic変化そのものがMRI上で改善するとは限りません。
逆に、
MRI上のModic変化が変化しても、痛みが同じように変わるとは限りません。
ここがModic変化を理解するうえで非常に重要なポイントです。
Modic変化は「ずっと同じ」ではない
まず知っておきたいのは、Modic変化は固定された所見ではないということです。
過去の縦断研究では、最初にModic Type 1だった終板の一部が、
- Type 1のまま残る
- Type 2へ変化する
- Type 3へ変化する
- 画像上ほぼ正常になる
など、時間とともにさまざまな変化を示しています。
つまり、
Modic変化=一度できたら一生残る
というわけではありません。
特にType 1は比較的変化しやすく、Type 2へ移行するケースもあります(追跡期間中に3〜4割程度がType 2へ完全・部分移行したと報告する研究もあります)。
Type 1がType 2になれば「治った」ということ?
ここも注意が必要です。
Modic Type 1は、
骨髄浮腫や炎症性・線維血管性変化
を反映すると考えられています。
一方、Type 2では、
脂肪髄化
が主体になります。
そのため、
Type 1 → Type 2
という変化を見ると、
「炎症が治って回復した」
と考えたくなります。
実際、Type 1からType 2への移行が、その後の症状改善と関連していたとする報告もあります。
しかし、そこまで単純ではありません。
Type 2も正常な骨髄とは異なる状態です。
さらにType 2からType 1へ戻る例も報告されています。
したがって、
Type 1→Type 2=完全治癒
と考えるのは正確ではありません。
より適切なのは、
終板周囲の骨髄で起きている生物学的状態が変化した
と考えることです。
では、運動するとModic変化は改善する?
現時点では、
「この運動をすればModic変化が消える」
と言えるだけのエビデンスはありません。
Modic変化がある慢性腰痛患者を対象として、
運動を行って活動を維持する方法
と、
腰への負荷を減らし、毎日休息する方法
を比較したランダム化比較試験があります。
その結果、痛みや機能障害について、運動群と安静群の間に明確な差はありませんでした。
さらにMRI所見によって、
「Type 1なら安静の方がよい」
「大きなModic変化なら運動を避けた方がよい」
といった違いがあるかも検討されましたが、特定のMRI所見によって治療反応が明確に分かれるとは示されませんでした。
つまり、
Modic変化があるから運動を避ける必要がある
とも、
運動すればModic変化そのものが改善する
とも、現在の研究からは言えません。
「症状が良くなる」と「MRIが良くなる」は別の話
ここが今回のテーマの核心です。
私たちはつい、
MRIが悪い ⇒痛い MRIが良くなる ⇒ 痛みも良くなる
と考えたくなります。
しかし、実際の人体はそれほど単純ではありません。
Modic変化を14か月追跡した研究では、Typeや大きさが時間とともに変化しましたが、MRI上の変化と腰痛の変化は必ずしもきれいには一致しませんでした。
別のType 1の追跡研究でも、
Type 1がType 2へ変化した人では痛みや機能障害が少ない傾向がみられたものの、その関連は統計学的に明確ではありませんでした。
つまり、
MRIが変化すれば必ず症状も変化するわけではない
ということです。
逆に、MRIが変わらなくても痛みは改善する
これも非常に重要です。
腰痛は、
- 組織への負荷
- 神経系の感受性
- 筋力
- 持久力
- 動作への恐怖
- 睡眠
- ストレス
- 身体活動量
など、さまざまな要因の影響を受けます。
そのためModic変化がMRI上に残っていたとしても、
身体機能や活動量が改善し、痛みが軽減することは十分にあり得ます。
逆にMRI画像が改善したとしても、他の要因が残っていれば痛みが続く可能性があります。
これが、
「構造」と「症状」は同じではない
という意味です。
長期予後との関係は? ― 実は一貫していない
Modic変化と将来の予後の関係については、研究によって結果が分かれています。
10年間追跡したある研究では、Modic変化がある慢性腰痛患者と、Modic変化がない患者を比較しても、
- 腰痛の強さ
- 機能障害
- 医療の利用
- 手術の必要性
に明確な違いは認められませんでした。
一方で、別の13年間の追跡研究では、椎間板変性(変性の程度)や椎間関節の変化よりも、Modic変化そのものと日常の身体活動量の2つが、13年後の機能障害(Roland-Morris質問票のスコア)と有意に関連していたと報告されています。つまりこの研究に限っては、Modic変化が長期的な機能予後を予測しうる所見として浮かび上がっています。
さらに、1年間の追跡研究では、Type 1 Modic変化がある人は、ない人に比べて痛みや機能の改善が乏しく、復職できない割合も高かったとする報告もあります。
つまり、
「Modic変化は長期予後に無関係」と言い切れるほど、エビデンスは一致していません。
短期〜中期では悪化リスクとの関連を示す研究がある一方、長期では差が出ない研究もある、というのが正直なところです。少なくとも、
Modic変化があるからといって、機械的に「将来必ず悪くなる」と決めつける必要はありません。
が、「画像所見だから経過を楽観視してよい」というわけでもなく、症状の推移を個別に見ていく必要があります。
では運動には何の意味がある?
ここで、
「MRIが治らないなら運動しても意味がないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、運動の目的は、
MRI画像をきれいにすることではありません。
目的は、
- 痛みを軽減する
- 筋力や持久力を高める
- 動ける範囲を増やす
- 日常生活を取り戻す
- 仕事や趣味に復帰する
- 動くことへの不安を減らす
ことです。
MRI上のModic変化を消すことが、リハビリのゴールではありません。
これは他の画像所見でも同じです。
椎間板変性が残っていても元気に生活している人はいます。
変形性関節症の画像所見が残っていても、症状が大きく改善する人もいます。
「画像を治すこと」と「人を良くすること」は別です。
MRIを繰り返し撮れば経過がわかる?
Modic変化があると、
「数か月後にもう一度MRIを撮って、治ったか確認した方がいいのでは?」
と思うこともあります。
しかし、症状や神経学的所見などに大きな変化がなければ、
Modic変化の変化を見るためだけに繰り返しMRIを撮影する意味は限定的です。
なぜなら、
MRIが変化していても症状と一致するとは限らず、
MRIが変化していなくても身体機能が改善する可能性があるからです。
大切なのは、
画像ではなく「その人がどう変わったか」を見ること
です。
本当に見るべき変化とは?
リハビリで確認したいのは、
MRIのTypeが変わったかどうかだけではありません。
例えば、
以前は10分しか歩けなかった ⇒30分歩けるようになった
以前は前屈すると強く痛んだ ⇒ 日常生活では気にならなくなった
買い物袋を持てなかった ⇒ 普通に持って帰れるようになった
仕事を休んでいた ⇒ 仕事に復帰できた
こうした変化の方が、本人にとってははるかに重要です。
MRIにModic変化が残っていても、
生活が戻っているなら、それは明確な改善です。
Modic変化そのものを治療対象にするべきなのか?
近年では、Modic Type 1・2を椎体終板由来の疼痛を示す画像所見として利用し、椎体内神経を標的とする治療も研究・実施されています。
このことからも、Modic変化が単なる「意味のない画像所見」とは言えません。
一方で、
Modic変化があるすべての人に治療が必要
ということでもありません。
重要なのは、
MRI所見と臨床症状が本当に一致しているか
です。
画像所見だけを治療するのではなく、その人の症状や機能と合わせて判断する必要があります。
まとめ
Modic変化は固定されたものではなく、時間とともに、
Type 1 → Type 2
などへ変化したり、まれに消失したりすることがあります。
しかし、
運動によってModic変化そのものが改善する、と言える十分な証拠は現在ありません。
そしてさらに重要なのは、
MRIの改善と症状の改善は必ずしも一致しない
ということです。長期予後との関係についても研究間で結果が割れており、「Modic変化があれば必ず悪化する」とも「Modic変化があっても予後には関係ない」とも、単純には言い切れません。
運動やリハビリの目的は、
MRI画像を正常に戻すことではありません。
痛みを減らし、
歩けるようになる。
仕事に戻る。
好きなことができる。
生活の中で腰を気にする時間が減る。
そうした変化こそ、本当に目指すべき改善です。
「MRIがまだ変わっていないから治っていない」
とは限りません。
画像を見ることは大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、
画像ではなく、その人自身がどう変わったかを見ることです。


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