最新レビューが示した「2000年越し」の共通点
「トリガーポイントとツボは同じです。」
鍼灸師なら一度は聞いたことがある話でしょう。
一方で、
「全く別物だ」
「似ているだけ」
「ドライニードリングと鍼灸は違う」
という意見もあります。
では、研究ではどう考えられているのでしょうか。
2022年に発表されたレビュー論文では、これまでの研究を整理し、トリガーポイント(Myofascial Trigger Point:mTrP)と古典経穴の関係について詳しく検討しています。
結論
「完全に同じ」と証明されたわけではありません。
しかし、
解剖学的・臨床的・生理学的に非常に高い一致を示す
というのが、このレビューの結論です。
つまり、
「偶然似ている」
だけでは説明が難しいレベルの一致が報告されています。
そもそもトリガーポイントとは?
トリガーポイントとは、
筋肉の中にできる過敏な部位です。
押すと痛みがあり、
離れた場所へ関連痛(Referred Pain)が出ることがあります。
現在では
- 理学療法
- 整形外科
- ドライニードリング
など幅広い分野で利用されています。
2000年以上前から存在していた「ツボ」
一方、
東洋医学では約2000年前から経穴(ツボ)が使われています。
興味深いことに、
『黄帝内経』には
- 決まった場所が痛む
- 押すと痛い
- 痛みが広がる
といった、現在のトリガーポイントを思わせる記載があります。
一致率① 解剖学的位置
最も有名なのが、
Melzackらの1977年の研究です。
48か所のトリガーポイントを調べた結果、
すべてのポイントが3cm以内に古典経穴を持っていました。
この研究は後に
「3cm以内では広すぎる」
との批判も受けました。
さらに詳細な解析
2006年、
Dorsherらは、
Travell & Simonsの255か所の代表的トリガーポイントを解析しました。
結果は、
255か所中238か所(93%以上)が、同じ筋領域に存在する古典経穴と一致しました。
この研究では、
「同じ筋肉へ刺入される」
ことを一致条件としているため、
1977年研究より厳密です。
一致率② 痛みへの効果
位置だけではありません。
一致した238組のポイントでは、
94%が痛みに対する適応まで一致しました。
つまり、
肩の痛みに効くトリガーポイントは、
肩痛に使われる経穴でもある可能性が非常に高かったのです。
一致率③ 痛み以外の作用
さらに興味深いのは、
耳鳴り
咳
めまい
など、
痛み以外への作用です。
60か所のトリガーポイントを調べたところ、
93%が対応する経穴と同様の作用を持っていました。
一致率④ 関連痛と経絡
このレビューで最も興味深い部分です。
筋肉のトリガーポイントから広がる関連痛を重ね合わせると、
膀胱経や肺経などの経絡走行と非常によく一致しました。
一致率は
91%
と報告されています。
論文中の図(6ページ)では、膀胱経・肺経の走行と、複数のトリガーポイントから生じる関連痛が重なる様子が示されています。
では「経絡が証明された」のか?
ここは慎重に考える必要があります。
この論文は、
経絡そのものを証明した研究ではありません。
示しているのは、
- トリガーポイント
- 経穴
- 関連痛
- 経絡走行
の間に非常に強い対応関係があるということです。
つまり、
「経絡の実体が見つかった」
とは言えません。
この論文の限界
非常に興味深いレビューですが、限界もあります。
- 新たな実験ではなくレビュー論文である
- 一致率は既存文献の解析結果に依存している
- 「一致」は因果関係を証明するものではない
- 著者自身がトリガーポイントと経穴の対応研究を行っており、独立した再現研究が今後さらに必要である
そのため、
「ツボ=トリガーポイント」と断定することは現時点ではできません。
まとめ
現在の研究から言えることは、
- トリガーポイントと経穴は93%以上が同じ筋領域に存在した
- 痛みに対する適応は94%一致した
- 痛み以外の作用も93%一致した
- 関連痛と経絡走行も91%一致した
- しかし、これだけで経絡や経穴の存在が証明されたわけではない
ということです。
東洋医学と現代医学は、まったく異なる歴史を歩みながらも、同じ身体現象を異なる言葉で記述している可能性があります。
この論文は、その可能性を示す興味深いエビデンスの一つと言えるでしょう。


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