リハビリの「1時間」より、その後の23時間が大切です

リハビリ

「今日はリハビリを1時間がんばった」——それは、とても大切な1時間です。 でも、脳卒中からの回復を左右するのは、じつはその1時間より、残りの23時間の過ごし方かもしれません。

在宅でリハビリに取り組むご本人・ご家族に、ぜひ知っておいてほしい研究の話をお伝えします。

病院でも、患者さんは一日の大半「動いていない」

「入院中なら、しっかりリハビリをしてもらえるから安心」——多くの方がそう思われます。ところが、現実は少し違います。

オーストラリアの研究チーム(Bernhardtら)が、発症から間もない脳卒中の患者さんを、朝8時から夕方5時まで10分ごとに観察しました。すると、患者さんは日中の大半を「ベッドで横になったまま」「ひとりきり」で過ごしていたことが分かりました。この研究は “Inactive and alone(不活動で、ひとりぼっち)” という印象的なタイトルで発表され、いまも世界中のリハビリ研究の出発点になっています。

専門職がそろい、設備も整った病院ですら、こうなのです。ましてご自宅では、リハビリの時間以外はテレビの前やベッドで過ごしがち——というのは、決して珍しいことではありません。

なぜ「1時間」だけでは足りないのか

脳は、繰り返し使われた動きを少しずつ再学習していきます。麻痺した手足の回復も、脳が「その手足を使う」経験を積み重ねることで進んでいきます。

ところが、専門職によるリハビリの時間は、一日のうちほんのわずか。訪問リハなら、週に数回・1回あたり数十分ということも多いでしょう。1週間は168時間。そのうちリハビリの時間は、ほんの数時間にすぎません。

つまり、回復のチャンスの大半は「リハビリ以外の時間」の中にある——これが「23時間が大切」という言葉の本当の意味です。

使わない時間が、体を後戻りさせる

動かない時間が長くなると、体は驚くほど早く「衰えるモード」に入ります。筋肉はやせ、関節はかたくなり、体力が落ちていきます。これを 廃用(はいよう) といいます。

せっかくリハビリの1時間で前に進んでも、残りの23時間をずっと横になって過ごせば、その分を打ち消してしまいかねません。逆に言えば、23時間の中に「体を使う場面」を少しずつ増やすことが、回復を後押しする一番の近道になります。

「たくさんやれば、よくなる」は本当か

ここで、多くの方が抱く疑問にお答えします。「では、どれくらいやれば効果が出るのか?」——じつは、これも研究で調べられています。

たくさんの研究を集めて分析した報告(Lohseら, Is more better?)では、練習の量が多い人ほど、手足を使う・歩くなどの力がよく改善するという関係が示されました。回復は、積み重ねた練習の量に、かなり素直に反応してくれるのです。

ただし——その「たくさん」は、多くの方が思うよりずっと大きな量です。同じ内容のリハビリを「量だけ」増やした研究を厳密に分析したSchneiderらの報告(2016年)では、普段の量に対して少なくとも240%ほど上乗せしないと、はっきりした改善は見込みにくいという結果でした。「もし普段の練習が30分なら、100分まで増やす必要がある」という例で説明されています。

プロの時間だけでは、そこに届かない

この「240%上乗せ」を、専門職の訪問時間だけで満たすのは、現実的に不可能です。

専門職によるリハビリの1回は平均およそ50分。しかも、その間ずっと動いているわけではなく、実際に体を動かしている時間は6割ほどという報告もあります。1回で行う練習が、上肢の運動で30回あまり、歩行で200歩ほど、立ち上がりで10回程度、ということも珍しくありません。訪問の回数や時間には、制度上も体力上も限りがあります。

だからこそ、足りない分を補う場所は——リハビリ以外の23時間、つまり毎日の暮らしの中なのです。プロの1時間は、いわば23時間を正しく使うための”設計図と道しるべ”。回復の主役は、日々の暮らしの側にあります。

23時間の中の、ほんの少しだけ私たちにお時間をください

リハビリの時間は、1日の中ではほんのわずかです。

だからこそ、その限られた時間で終わるのではなく、残りの23時間が少しでも過ごしやすくなるようなお手伝いをしたいと考えています。

訪問鍼灸リハりんでは、鍼灸による身体のケアだけでなく、必要に応じて機能訓練や自主トレーニング、日常生活での身体の使い方まで含めてサポートしています。

「立ち上がりが少し楽になった」「家の中を歩くことが増えた」「麻痺した手を使う機会が増えた」。

そんな小さな変化の積み重ねが、ご自宅で過ごす23時間を少しずつ変えていきます。

23時間すべてを頑張る必要はありません。

その23時間の中の、ほんの少しだけ私たちにお時間をください。

その時間が、残りの23時間をより良いものにするきっかけになれば幸いです。

おわりに

リハビリの1時間は、回復への大切な入り口です。 でも、その扉の先に広がる23時間をどう歩くかで、たどり着ける場所は大きく変わります。

訪問鍼灸リハりんは、その23時間を、ご本人・ご家族と一緒にデザインするお手伝いをしています。


参考文献

  • Bernhardt J, Dewey H, Thrift A, Donnan G. Inactive and alone: physical activity within the first 14 days of acute stroke unit care. Stroke. 2004;35(4):1005-1009.
  • Schneider EJ, Lannin NA, Ada L, Schmidt J. Increasing the amount of usual rehabilitation improves activity after stroke: a systematic review. Journal of Physiotherapy. 2016;62(4):182-187.
  • Lohse KR, Lang CE, Boyd LA. Is more better? Using metadata to explore dose-response relationships in stroke rehabilitation. Stroke. 2014;45(7):2053-2058.

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