夜、ぐっすり眠っているときに突然ふくらはぎがギューッとつって、飛び起きてしまう——。
しかも一度つると、その後しばらく筋肉が痛だるく残り、なかなか寝つけない。
この「こむら返り」に悩まされている方は、実はとても多くいらっしゃいます。
50歳を過ぎると約3人に1人が経験するといわれ、60代以降ではさらに増えていきます。ご本人はもちろん、「夜中に痛がる声で目が覚めた」と、ご家族が心配して相談に来られることも少なくありません。
「歳のせいだから仕方ない」「体質だから治らない」と思われがちですが、こむら返りは原因を知り、適切な対策を続けることで、回数や痛みの軽減が期待できます。
この記事では、なぜ夜に足がつるのかというしくみから、つってしまったときの対処法、そして今日から始められる予防法まで、最新の知見をもとにわかりやすくご紹介します。
そもそも、なぜ足がつるの?
「筋肉が疲れたからつる」と思われることが多いのですが、実は筋肉だけが原因ではありません。
現在では、筋肉と神経のバランス(神経筋制御)が崩れ、筋肉を収縮させる神経が過剰に興奮することで起こると考えられています。
普段、私たちの筋肉には「縮みすぎないようにブレーキをかける仕組み」があります。
しかし、
- 筋肉が疲れている
- 筋肉が短く縮んだ状態が続いている
- 加齢で神経の働きが変化している
このような状態になると、そのブレーキが十分に働かなくなります。
すると神経が必要以上に興奮し、筋肉が一気に収縮してしまいます。
これが「こむら返り」です。
つまり、筋肉そのものが壊れているわけではなく、神経と筋肉の調整が一時的に乱れている状態なのです。
なぜ「夜」「ふくらはぎ」に多いの?
夜中に起こりやすいのにも理由があります。
眠っている間は、足首が自然と下へ伸び、つま先が下を向いた姿勢(底屈)になりやすくなります。
すると、ふくらはぎの筋肉は短く縮んだ状態になります。
短くなった筋肉は神経が興奮しやすくなるため、寝返りなどの小さな刺激だけでも、こむら返りが起こりやすくなると考えられています。
さらに夜には、
- 日中の疲労
- 軽い脱水
- 加齢による筋肉量や神経機能の変化
- 体温や血流の変化
などが重なるため、夜間に起こりやすくなります。
また、高齢になるほど筋肉量や柔軟性が低下し、日中の活動量も減りやすくなるため、若い頃よりこむら返りが起こりやすくなります。
今日からできる予防法
① 寝る前のストレッチ(もっともおすすめ)
現時点で、最も科学的根拠がある予防法の一つが寝る前のストレッチです。
55歳以上を対象とした研究では、毎晩寝る前にふくらはぎと太ももの裏をストレッチしたところ、6週間後にはこむら返りの回数・痛みともに有意に改善しました。
お金もかからず、副作用もなく、自宅で続けられるため、まず最初に取り組んでいただきたい方法です。
壁を使った方法
- 壁から腕一本分ほど離れて立つ
- つりやすい足を後ろへ引く
- 後ろ足の膝は伸ばしたまま
- かかとは床につける
- 前足の膝を曲げながら体を前へ倒す
- ふくらはぎが気持ちよく伸びたところで30秒キープ
左右とも行いましょう。
寝る前の歯磨きとセットにすると習慣化しやすくなります。
座って行う方法
立つことが不安な方は、
タオルを足裏へかけ、膝を伸ばしたまま手前へゆっくり引きます。
ベッドの上でもできるので、高齢の方にもおすすめです。
② 水分不足だけに頼らない
「水を飲めば治る」と聞いたことがある方も多いでしょう。
確かに脱水はこむら返りのきっかけになることがあります。
しかし、普段の生活を送っている方では、水分不足だけが原因というケースは多くありません。
もちろん、暑い日や運動後には十分な水分補給が大切です。
ただ、「たくさん水を飲めば治る」というものではなく、ストレッチや日頃の運動などと組み合わせることが重要です。
③ 寝る環境を整える
寝る環境も意外と重要です。
- 冷えを感じやすい方はレッグウォーマーなどで保温する
- 足元を重い布団で押さえつけない
- 足首が下を向いた姿勢が続きにくい環境を作る
このような小さな工夫でも、夜間のこむら返りが減る方は少なくありません。
④ 日中は「適度に動く」
こむら返りでは、
動かなすぎても、動きすぎてもよくありません。
⑤ むくみがある方は弾性ストッキングも選択肢
夕方になると足がむくむ、重だるい、静脈瘤があるという方では、静脈の血流が滞っていることがあります。
このような方では、医療用弾性ストッキングによって夜間こむら返りが改善したという研究も報告されています。
ただし、すべての方に必要なわけではありません。
締め付けの強さや適応には個人差がありますので、自己判断ではなく、医療者へ相談しながら選ぶことをおすすめします。
マグネシウムは効くの?
「足がつるならマグネシウムを飲んだほうがいい」
そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際、ドラッグストアにはマグネシウムのサプリメントが数多く並んでいます。
しかし現在の研究では、一般的な夜間こむら返りに対して、マグネシウムが十分な効果を示すという根拠はありません。
もちろん、マグネシウム不足がある方では改善する可能性があります。しかし、多くの方では「飲めば治る」とまでは言えないのが現状です。
「何か月も飲み続けているけれど変わらない」という方は、サプリメントだけに頼るのではなく、前編で紹介したストレッチや生活習慣の見直しを優先することをおすすめします。
※腎臓や肝臓の病気などがある方は、自己判断でサプリメントを始める前に主治医へ相談してください。
漢方薬(芍薬甘草湯)は効くの?
病院や薬局で「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を勧められたことがある方もいるかもしれません。
芍薬甘草湯は、こむら返りに対して比較的効果が期待できる漢方薬として広く使われています。
ただし、甘草(かんぞう)という生薬を含んでいるため、長期間服用すると、
- 血圧が上がる
- むくみが出る
- カリウムが低下する
などの副作用(偽アルドステロン症)が起こることがあります。
そのため、自己判断で飲み続けるのではなく、医師や薬剤師と相談しながら使用しましょう。
こんなときは一度お医者さんへ
こむら返りの多くは命に関わるものではありません。
しかし、中には病気や薬の影響が隠れていることがあります。
薬を飲み始めてからつるようになった
次のようなお薬では、こむら返りが起こりやすくなることがあります。
- 利尿薬
- 一部の降圧薬
- コレステロールを下げる薬(スタチン)
- 糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)
- ぜんそく・COPDの吸入薬
「薬を変えてから急につるようになった」
そんな時は重要な手がかりになります。
ただし、
自己判断で薬を中止することは絶対にやめてください。
気になる場合は、処方した医師へ相談しましょう。
次のような場合も受診をおすすめします
- 毎晩のようにつる
- 痛みが強く眠れない
- 足のしびれや力が入りにくい
- 歩きづらくなってきた
- 片足だけ繰り返しつる
- 足が腫れている
これらの場合は、
- 腰から出る神経の障害
- 糖尿病による神経障害
- 甲状腺の病気
- 腎臓病
- 血管の病気
などが隠れていることがあります。
また、今までほとんどつったことがなかった方が、急に毎晩つるようになった場合も、一度医療機関で相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. バナナを食べると治りますか?
バナナにはカリウムが含まれています。
カリウム不足が原因の場合は役立つことがありますが、多くの夜間こむら返りでは、それだけで改善するとは限りません。
Q. 湿布は効きますか?
湿布は痛みを和らげることはありますが、こむら返りを予防する効果は期待できません。
Q. お風呂は入ったほうがいい
おすすめです。
入浴によって筋肉が温まり、リラックスしやすくなるため、寝る前の入浴は取り入れやすい予防法の一つです。
Q. ストレッチを続けても治りません。
薬の影響や病気が隠れている可能性もあります。
毎晩続く場合や、症状が強い場合は、一度医療機関へ相談しましょう。
参考文献
- Hallegraeff JM, et al. Stretching before sleep reduces the frequency and severity of nocturnal leg cramps in older adults: a randomised trial. J Physiother. 2012.
- El-Tawil S, et al. Quinine for muscle cramps. Cochrane Database Syst Rev. 2015.
- Garrison SR, et al. Magnesium for skeletal muscle cramps. Cochrane Database Syst Rev. 2020.
- Blyton F, et al. Compression stockings for nocturnal leg cramps in patients with venous insufficiency. (静脈うっ滞患者を対象とした研究)


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