筋肉は脳と話している?

リハビリ

サルコペニア(筋肉の衰え)と認知症の、ふしぎなつながり

「足腰が弱ってきた」「最近、もの忘れが増えた気がする」——年齢を重ねると、どちらもよく聞く悩みです。

一見すると別々の問題のように思えますが、近年の研究では、この二つには深いつながりがあることが分かってきました。今回は、筋肉と脳の関係について、現在分かっていることを、できるだけ分かりやすくご紹介します。


そもそも「サルコペニア」とは?

サルコペニアとは、加齢に伴って筋肉量が減り、筋力や身体機能(歩く・立つ・持ち上げるなど)が低下した状態をいいます。加齢だけでなく、運動不足や低栄養、病気なども影響します。

握力が弱くなる、歩く速度が遅くなる、立ち上がりにくくなるといった変化が代表的なサインです。

こんな変化はありませんか?

  • ペットボトルのふたが開けにくくなった
  • 横断歩道を青信号のうちに渡りきれないことがある
  • 椅子から立ち上がるときに手をついてしまう
  • 最近、つまずくことが増えた

こうした変化は、「年齢のせい」と片付けるだけでなく、筋力低下のサインかもしれません。


筋肉が衰えると、認知機能も低下しやすい?

世界中の研究をまとめたメタ解析では、サルコペニアのある方は、ない方に比べて認知機能の低下がみられる割合が高いことが繰り返し報告されています。その差は、およそ1.5〜2倍程度とされています。

ただし、ここで大切なのは、「筋肉が減ると必ず認知症になる」という意味ではないことです。

現在の研究で分かっているのは、筋肉の衰えと認知機能の低下には統計的な関連があるということです。年齢や運動習慣、栄養状態、生活習慣病、炎症など、両方に影響する要因が多いため、「筋肉が原因」とまでは言えません。

しかし、この関連は世界中の研究で一貫して報告されており、筋肉と脳を切り離して考えられなくなってきています。


実は「筋肉量」よりも「筋力」のほうが大切かもしれません

最近の研究では、筋肉の量そのものよりも、

  • 握力
  • 歩く速さ
  • 椅子から立ち上がる力

といった筋力や身体機能のほうが、認知機能との関連がより強いことが報告されています。

つまり、「筋肉をどれだけ持っているか」よりも、「筋肉をどれだけ使えているか」が重要なのかもしれません。

握力や歩行速度は特別な検査がなくても比較的評価しやすく、健康状態を知る一つの目安としても注目されています。


なぜ筋肉と脳はつながっているのでしょう?

その理由は、まだ完全には解明されていません。

しかし現在、最も注目されている仕組みの一つが、筋肉が分泌する「マイオカイン」です。

筋肉は単に体を動かすだけの器官ではありません。

歩く、立つ、筋力トレーニングをするなど、筋肉が活動すると、「マイオカイン」と呼ばれるさまざまな生理活性物質が血液中へ放出されます。

これらの物質の一部は脳へ作用し、BDNF(脳由来神経栄養因子)など、神経細胞の働きや神経同士のつながりを支える仕組みに関与すると考えられています。

BDNFは、学習や記憶に重要な役割を果たす物質として知られており、運動によって増加する可能性が数多くの研究で示されています。

このほかにも、

  • 血流の改善
  • 慢性的な炎症の抑制
  • 血糖コントロールの改善
  • ホルモンや免疫機能への作用

など、さまざまな経路を通じて運動が脳へ良い影響を与えている可能性が考えられています。

つまり、筋肉は脳へ「情報」を送り続ける重要な臓器なのです。

「筋肉は第二の脳」と紹介されることもありますが、正確には、筋肉は脳と情報をやり取りする重要なメッセンジャーとして注目されています。


今日からできること

筋肉は、年齢を重ねても適切な刺激を与えれば応えてくれる臓器です。

実際に、80代や90代の方でも、筋力トレーニングによって筋力や歩く力が改善したことが、多くの研究で報告されています。

「もう年だから」と諦める必要はありません。

まずは続けられることから始めてみましょう。

① 体を動かす習慣をつくる

歩く、階段を使う、スクワットやかかと上げなどの軽い筋力トレーニングでも十分です。

一度にたくさん行うより、少しずつでも継続することが大切です。

② たんぱく質をしっかり摂る

筋肉の材料となるのは、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などに含まれるたんぱく質です。

運動と栄養を組み合わせることで、筋肉はより維持・改善しやすくなります。

③ 人との交流を大切にする

外出や会話、趣味や地域活動なども、体と脳の両方によい刺激になります。

「体を動かす」「人と話す」「考える」を組み合わせることが、健康づくりにつながります。


まとめ

筋肉の衰えと認知機能の低下には、深い関連があることが分かってきました。

まだ「筋肉が衰えると認知症になる」と断言できる段階ではありませんが、運動によって筋肉を保つことは、転倒予防だけでなく、脳の健康を守ることにもつながる可能性があります。

筋肉は、年齢を重ねても変化できる臓器です。

「歩く」「立つ」「体を動かす」という毎日の積み重ねが、未来の体と脳への大切な投資になるかもしれません。


リハりんからのメッセージ

私たちリハりんは、ご自宅に伺い、お一人おひとりの体の状態に合わせたリハビリと鍼灸をご提供しています。

「転びそうで運動が怖い」「何をすればいいか分からない」「最近、歩く力が落ちてきた気がする」——そんな不安があれば、一人で抱え込まずにご相談ください。

脳卒中後の後遺症や神経疾患のある方はもちろん、ご高齢で筋力低下が気になる方にも、安全で無理のない運動をご提案いたします。

体を守ることは、脳を守ることにもつながります。

その第一歩を、私たちと一緒に始めてみませんか。

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