なぜ研究者は「脳血流」を見ているの?
ここまで読むと、
「結局、血流が増えても増えなくても同じなの?」
と思う方もいるかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
実は脳の中で何が起きているのかを直接見ることは、とても難しいのです。
筋肉なら、
「力が強くなった」
「動くようになった」
と目で見て分かります。
しかし脳の神経細胞の働きは、外から直接見ることができません。
そこで研究者たちは、
- 脳血流
- 酸素の量
- 脳波
- MRI
などを利用して、
「脳がどれくらい活動しているのか」
を推測しています。
つまり脳血流は、
脳そのものを見るための窓のような存在なのです。
血流が増えるのは「脳が仕事をしているサイン」
たとえば難しい計算をするとき。
ピアノを弾くとき。
初めての道を歩くとき。
脳の特定の部分が活発に働きます。
すると、その場所の血流も増えます。
これは脳が大量のエネルギーを必要とするためです。
つまり血流が増えるということは、
その場所が働いているサインでもあります。
頭皮鍼の研究で血流増加が注目されるのは、
脳が刺激に反応している証拠の一つだからです。
でも、エンジンをかけただけでは目的地には着かない
ここで一つ考えてみましょう。
車はエンジンをかけると燃料を使います。
しかしエンジンをかけただけでは目的地には到着しません。
アクセルを踏み、ハンドルを操作し、実際に走る必要があります。
脳も似ています。
血流が増えるというのは、
エンジンがかかった状態です。
しかし、
- 歩く
- 手を使う
- バランスを取る
といった練習をしなければ、
その活動は機能回復にはつながりません。
回復する脳には共通点がある
近年の研究では、
回復しやすい人の脳にはある共通点があることが分かってきました。
それは、
「たくさん使われている」
ということです。
使われる神経回路は強化されます。
逆に使われない神経回路は弱くなります。
これは健康な人でも同じです。
スポーツでも楽器でも語学でも、
繰り返し使うことで上達します。
脳卒中後の回復も基本的には同じです。
脳は使うことで変化します。
頭皮鍼は「脳を学習モードにする」可能性がある
ここが私が頭皮鍼に期待している部分です。
頭皮鍼をすると、
脳への感覚入力が増えます。
すると脳の活動が高まり、
運動に関係する領域や感覚に関係する領域が反応します。
例えるなら、
眠っている脳を無理やり起こすというより、
学習しやすい状態へ切り替えるようなイメージです。
もちろん、まだ分かっていないこともたくさんあります。
しかし、
頭皮鍼
↓
脳活動の変化
↓
脳血流の増加
↓
リハビリによる学習
という流れは、現在の研究結果とも比較的よく一致しています。
私が「鍼だけでは足りない」と考える理由
私は鍼灸師でもあり理学療法士でもあります。
だからこそ、
鍼だけで全てが解決するとは考えていません。
もし血流を増やすだけで回復するなら、
リハビリは必要なくなってしまいます。
しかし実際にはそうではありません。
脳卒中後の回復には、
- 立つ
- 歩く
- 手を使う
- 体重を支える
- バランスを取る
という経験そのものが必要です。
脳は実際の経験から学ぶからです。
一方で、
脳が学びやすい状態を作ることも重要です。
だから私は、
頭皮鍼で脳に刺激を入れながら、その場で運動を行う
ことに意味があると考えています。
最後に
頭皮鍼の研究で脳血流の増加が報告されると、
「血流が増えるから効く」
と説明されることがあります。
しかし現在の研究を丁寧に見ると、
話はもう少し複雑です。
血流は大切です。
脳が働くためには必要です。
しかし回復の主役は血流そのものではありません。
主役は、
脳が学び、
変化し、
新しい回路を作っていく力です。
頭皮鍼は、その学習を助ける環境づくりの一つかもしれません。
だからこそ私は、
「鍼を受けて終わり」ではなく、
「鍼を活用しながら体を動かす」
ことが大切だと考えています。
お気軽にお問い合わせください。



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