「脳の血流」から見えてきた、頭皮鍼のしくみ
最新の医学レビュー(Frontiers in Neuroscience, 2023年)を、やさしく解説します。
脳卒中のあと、リハビリと一緒に「頭皮への鍼(頭皮鍼)」をご案内すると、ご本人やご家族からよくこう聞かれます。「頭に鍼を打って、どうして脳に効くの?」――もっともな疑問です。今回は、その答えのヒントになる新しい研究を、なるべくかみくだいてご紹介します。
これまでの説明と、その限界
頭皮鍼は古くから「頭皮のこの場所が、脳のこの働きの部分に対応している」と説明されてきました。手足を動かす脳の領域の“真上”あたりに鍼をする、という考え方です。たくさんの臨床経験と成功例が積み重なってきた一方で、この“地図のように対応している”という説明は、科学的にきちんと証明しきれていませんでした。
カギは「脳の血流」だった
この総説が注目したのは、脳へ流れる血液の量――脳血流(のうけつりゅう)です。脳の病気の多くは、脳の血流が落ちていることと深く関係しています。そして頭皮鍼には、その脳の血流を増やす働きがあることが、MRIなどの画像検査でくり返し確認されてきました。
| ポイント多くの脳の不調は「血流の低下」と関係している。頭皮鍼は、その脳の血流を高める方向にはたらく――これが回復を後押しする、と考えられています。 |
頭皮の神経は、脳の血管とつながっている
頭皮は、三叉神経(さんさしんけい)をはじめとする神経に支配されています。これらの神経は、脳をめぐる血管の“広げる・しぼめる”の調整にも関わっています。つまり、頭皮を鍼で刺激すると、神経を通じて脳の血管がゆるみ、血流が増える――そんな道すじが少しずつ明らかになってきたのです。鍼が直接“脳の地図”を押しているのではなく、神経のネットワークを介して脳の血流を整えている、というイメージです。
だから「ピンポイントのツボ」でなくても届く
興味深いのは、手足の領域の“真上”だけでなく、頭皮のさまざまな場所を刺激しても脳の血流が上がる、という点です。これは、頭皮の神経が広い範囲で重なり合っているためと考えられます。鍼の場所が数ミリずれても効果が消えてしまう、というものではない――この事実は、患者さんが安心して受けられる根拠のひとつでもあります。
リハりんでの考え方
リハりんでは、頭皮への鍼と「実際に体を動かす練習」を組み合わせる動作式頭皮鍼(MSSA)を取り入れています。脳の血流を整えながら、その状態で手足を動かしてもらうことで、リハビリの一歩をていねいに引き出していくねらいです。理学療法士と鍼灸師、両方の視点から、おひとりおひとりの状態に合わせて進めます。
| 大切にしていること効果には個人差があります。鍼だけで治す、というものではありません。主治医やケアマネジャーと連携しながら、リハビリ全体の一部として行います。気になる症状や持病がある場合は、まず担当の医療職にご相談ください。 |
まとめ
頭皮鍼が脳卒中の回復を助けるのは、頭皮の神経を通じて脳の血流を高めるから――この研究は、そうした新しい見方を示しました。長く積み重ねられてきた臨床の手応えに、科学的な裏づけが少しずつ加わってきています。
※ この記事は研究内容の紹介であり、特定の効果を保証するものではありません。治療の判断は、必ず担当の医療職とご相談ください。
| 出典Jin GY, Jin LL, Jin BX, Zheng J, He BJ, Li SJ. Neural control of cerebral blood flow: scientific basis of scalp acupuncture in treating brain diseases. Frontiers in Neuroscience. 2023 Aug 15;17:1210537.DOI: 10.3389/fnins.2023.1210537 / PMID: 37650106 (総説・オープンアクセス) |
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