鍼灸はなぜ効くのか?【第4回】
局所血流改善のメカニズム
監修:理学療法士・鍼灸師 金野広大(リハりん)
「鍼をすると血行が良くなる」
鍼灸について語られるとき、最もよく聞く説明の一つです。
しかし、
「本当に血流は増えるのですか?」
と聞かれると、答えに困る鍼灸師も少なくありません。
実は近年の研究により、鍼刺激によって局所の血流が増加することが確認されています。
今回は、昔から言われてきた「血行が良くなる」という現象を、最新の神経科学と生理学の視点から解説します。
血流が悪くなると何が起こるのか?
筋肉は生きた組織です。
常に血液から
- 酸素
- ブドウ糖
- 栄養素
を受け取っています。
一方で、
- 二酸化炭素
- 乳酸
- 炎症性物質
などは血液によって回収されます。
ところが、
- 長時間のデスクワーク
- スマートフォン操作
- 運動不足
- ストレス
などが続くと筋肉は緊張し、血管が圧迫されます。
すると血流が低下し、
- 肩こり
- 首こり
- 腰の重だるさ
などが起こりやすくなります。
鍼をすると何が起こるのか?
鍼が筋肉や筋膜に入ると、体はその刺激を感知します。
すると周囲の神経終末からさまざまな物質が放出されます。
代表的なのが
- 一酸化窒素(NO)
- CGRP
- サブスタンスP
です。
これらは血管を拡張させる作用を持っています。
つまり、
鍼刺激
↓
神経反応
↓
血管拡張
↓
血流増加
という反応が起こるのです。
一酸化窒素(NO)とは?
近年の血流研究で最も重要な物質の一つが
一酸化窒素(Nitric Oxide:NO)
です。
NOは血管内皮細胞から放出され、
血管平滑筋を緩める働きを持っています。
簡単に言うと、
血管を広げるスイッチ
です。
1998年にはNO研究に対して
Robert Furchgott、
Louis Ignarro、
Ferid Murad
がノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
それほど重要な発見でした。
研究では鍼刺激によってNO産生が増加する可能性が報告されています。
サーモグラフィでも確認されている
血流改善は「気がする」だけではありません。
実際に
- サーモグラフィ
- レーザードップラー血流計
などを用いた研究では、
刺鍼後に
- 皮膚温上昇
- 局所血流増加
が確認されています。
つまり、
鍼による血流変化は客観的に測定可能な現象
なのです。
肩こりで考えてみる
肩こりでは、
筋緊張
↓
血流低下
↓
発痛物質蓄積
↓
痛み
↓
さらに筋緊張
という悪循環が起こります。
鍼刺激によって血流が改善すると、
- 酸素供給が増える
- 老廃物が除去される
- 発痛物質が減少する
可能性があります。
結果として、
筋肉が柔らかくなり、
痛みや重だるさの軽減につながると考えられています。
血流だけでは説明できない
ここで重要なのは、
鍼灸の効果は血流改善だけではない
ということです。
現在では、
- 内因性オピオイド
- 下行性疼痛抑制系
- 自律神経調節
- 神経可塑性
- 抗炎症作用
など複数のメカニズムが関与すると考えられています。
血流改善はその一部です。
しかし、
昔から言われてきた
「鍼をすると血行が良くなる」
という説明自体は、現代の科学でもある程度支持されているのです。
まとめ
鍼刺激によって、
- 一酸化窒素(NO)
- CGRP
- サブスタンスP
などが放出され、
局所の血流が増加することが確認されています。
これによって、
- 酸素供給
- 栄養供給
- 老廃物除去
が促進される可能性があります。
鍼灸の効果は血流改善だけではありません。
しかし、
「鍼をすると血行が良くなる」
という昔からの説明には、確かに科学的な根拠が存在するのです。
メール:
riharin.kk@gmail.com



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