脊髄損傷のリハビリに鍼灸を組み合わせると何が変わるの?

脊髄損傷

「リハビリだけで本当によくなるの?」「鍼灸って脊髄損傷にも効くの?」——そんな疑問を持つ患者さんやご家族は多いと思います。2025年に医学誌『Medicine』に掲載された中国の臨床研究が、この問いに一つの答えを示しています。今回は、その研究結果をわかりやすくご紹介します。

脊髄損傷とは?リハビリの現状

脊髄損傷(SCI)は、交通事故や転落などの外傷によって脊髄が損傷を受け、手足の麻痺・感覚障害・排尿障害などが生じる病態です。米国では毎年約1万8千件の新規発生があるとされています。

現在の主な治療法はリハビリテーション(理学療法・作業療法)ですが、「回復に限界を感じる」「もっとできることはないか」という声も少なくありません。そこで注目されているのが、鍼灸との組み合わせです。

今回の研究について

中国人民解放軍総合病院の鍼灸科で、脊髄損傷の回復期にある患者23名を対象に行われた比較試験です。

  • 鍼灸+リハビリ群(観察群):12名
  • リハビリのみ群(対照群):11名

治療期間を経て、排尿機能・運動機能・生活の質などを比較しました。

どんな鍼灸治療が行われたの?

使用されたツボは、以下のように神経の走行に沿ったポイントが選ばれています。

  • 曲池(橈骨神経)・内関(正中神経):上肢の麻痺に
  • 委中(脛骨神経)・陽陵泉(浅腓骨神経):下肢の麻痺に
  • 八髎・中極:排尿・排便障害に

毎日2穴ずつ交替して施術し、「ビリビリ・ズーン」という得気感(響き感覚)が出るまで刺激。留鍼なし(刺してすぐ抜く)の方法で、1日1回行われました。

研究の結果:3つの改善ポイント

① 排尿・排便機能の改善

鍼灸+リハビリ群では、

  • 残尿量
  • 排尿時の膀胱内圧

の改善が認められました。

一方、リハビリのみ群では有意な変化は認められませんでした。

この結果から、鍼灸は脊髄損傷後の排尿障害に対して補助的な役割を果たす可能性が示されています。

② 運動機能の改善

FIM(機能的自立度評価)およびBarthel Index(日常生活動作評価)は両群とも改善しました。

しかし、鍼灸を併用した群では改善幅がより大きくなりました。

このことから、鍼灸をリハビリに組み合わせることで、機能回復を後押しできる可能性が示唆されています。

③ 生活の質(QOL)の向上

SF-36による評価では、

  • 身体的苦痛
  • 活力
  • 社会活動
  • 精神的健康

などの項目で改善が認められました。

研究者らは、身体機能の改善に加え、継続的な治療やケアを受けることが心理面にも良い影響を与えた可能性があると考察しています。

なぜ鍼灸が脊髄損傷に効くの?(メカニズム)

脊髄損傷では、最初の損傷(一次損傷)に加えて、その後に起こる炎症・浮腫・神経細胞の死(二次損傷)が回復を阻みます。鍼灸はこの二次損傷を抑える可能性が動物実験などで示されています。

また、八髎穴は仙骨の孔(あな)に位置し、骨盤内の自律神経・骨盤底神経・体性神経が集まるポイントです。ここへの刺激が膀胱や直腸の機能調節に直接働きかけると考えられています。

この研究の限界と注意点

今回の研究は有望な結果ですが、いくつかの点を理解しておくことも大切です。

  • サンプル数が少ない(各群11〜12名):より大規模な研究で確認が必要
  • 中国の病院での実施:日本の環境と完全に同じではない
  • 全ての脊髄損傷患者に同じ効果が出るとは限らない

まとめ

この研究が示したのは、「鍼灸+リハビリ」の組み合わせが、リハビリ単独よりも脊髄損傷の患者さんに大きな恩恵をもたらす可能性があるということです。特に排尿・排便障害の改善、運動機能の回復促進、そして心身のQOL向上という3点で、鍼灸の上乗せ効果が確認されました。

「もう回復は止まった」と感じている方でも、鍼灸という選択肢を加えることで、新たな変化が生まれるかもしれません。ご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

【参考文献】

Jiang Y-B, Guan L, Li Y, et al. Efficacy analysis of acupuncture and rehabilitation for traumatic spinal cord injury. Medicine 2025;104:2(e41245).

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