〜長時間NMESで“手”まで変わった研究〜
脳卒中後、
- 「肩が下がっている」
- 「腕が重くて支えられない」
- 「座ると肩が抜けそう」
そんな状態を見たことはありませんか?
これは「肩関節亜脱臼」と呼ばれる状態です。
麻痺によって肩を支える筋肉が働かなくなると、腕の重さに負けて上腕骨が下に落ちてしまいます。
この状態が続くと、
- 肩の不安定感
- 上肢運動の低下
- 介助量の増加
- 肩周囲のトラブル
につながる可能性があります。
今回は、脳卒中後の肩関節亜脱臼に対して、
「長時間の電気刺激(NMES)」+「肩サポート」
を組み合わせた研究をご紹介します。
研究内容
この研究では、脳卒中後6か月未満で肩関節亜脱臼を認める患者28名を対象に比較が行われました。
参加者は2グループに分かれました。
実験群
- NMES(神経筋電気刺激)
- 肩サポート
- 通常リハビリ
対照群
- 偽物NMES(刺激なし)
- 肩サポート
- 通常リハビリ
つまり、
「肩サポートだけ」と
「肩サポート+本物NMES」
を比較した研究です。
NMESはどの筋肉に実施したか?
刺激した筋肉は、
- 棘上筋
- 後部三角筋
でした。
これらは、肩関節を支える重要な筋肉です。
ポイントは“刺激時間”
この研究で特徴的だったのは、
NMESをかなり長時間行っている
ことです。
実施頻度
- 週5日
- 6週間
刺激時間
- 最初は30分×3回
- 徐々に増加
- 最大60分×3回/日
つまり、
最大3時間/日
NMESを実施しています。
脳卒中リハビリでは、「反復量」が非常に重要です。
短時間だけ刺激して終わりでは、神経系の変化は起きにくい可能性があります。
結果① 肩の亜脱臼が改善
NMESを行ったグループでは、
- 介入後
- 2週間後フォローアップ
の両方で、肩関節亜脱臼が有意に改善しました。
平均では、
- NMES群:約9mm改善
- 対照群:約2mm改善
という差が見られました。
結果② “手”まで改善した
この研究で特に興味深いのはここです。
NMES群では、
- 上肢機能
- 手の機能
- finger extension(指伸展)
まで改善しました。
つまり、
肩への介入が、
手の機能改善にもつながった
ということです。
なぜ手まで改善したのか?
研究では、
「近位の安定性向上」
が理由として考察されています。
肩が不安定だと、
- 腕全体が崩れやすい
- 手の操作性が低下しやすい
状態になります。
逆に、
肩甲帯が安定すると、
上肢全体が使いやすくなる可能性があります。
これは臨床でも非常によく感じます。
手だけ練習しても、
肩が崩れていると効率が悪い
ことは少なくありません。
痛みは改善しなかった
一方で、
肩痛には有意差がありませんでした。
つまり、
「肩が下がっている=痛みの原因」
とは限らないということです。
研究では、
- 可動域制限
- 痙縮
- 中枢性疼痛
など、他の要因の関与も考察されています。
この研究から見えること
この研究からわかるのは、
「支えるだけでは不十分」
ということです。
スリングだけでは筋活動は戻りません。
逆にNMESだけでも、重力に対抗しきれない場合があります。
だからこそ、
“支えながら筋活動を入れる”
という考え方が重要になります。
さらに、
長時間・高頻度
で行っている点も見逃せません。
まとめ
脳卒中後の肩関節亜脱臼に対して、
- 長時間NMES
- 肩サポート
- 通常リハビリ
を組み合わせることで、
改善したもの
- 肩関節亜脱臼
- 上肢機能
- 手指機能
- 指伸展
- ADL
が改善しました。
一方で、
改善しなかったもの
- 肩痛
でした。
脳卒中後の上肢機能を考えるうえで、
肩は「ただの関節」ではありません。
“上肢全体の土台”です。
参考論文
Lavi C, et al. 2022.



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