脳卒中後慢性期の上肢リハビリ、何時間やれば変わるの?

リハビリ

はじめに

「リハビリをがんばっているのに、なかなか腕が動かせるようにならない…」

「どのくらいの頻度・時間でリハビリをすればいいの?」

ご家族からこういったご相談をよくいただきます。実は、これは世界中のリハビリ専門家が長年議論してきたテーマです。

今回は、米国の大学病院で行われた研究(Winstein et al., 2018)をもとに、「リハビリの量(時間)と回復の関係」についてわかりやすくご説明します。

この研究でわかったこと

この研究では、脳卒中を経験した方(発症から5ヵ月以上経過、軽度〜中等度の麻痺)45名が参加し、上肢のリハビリを

  • 0時間(比較グループ)
  • 15時間
  • 30時間
  • 60時間

の4グループに分かれて約3ヵ月間取り組みました。

📌 結果のポイント リハビリの時間が多いほど、日常生活での腕の「使いやすさ」が改善しました。特に60時間グループで最も大きな変化が確認されました(p=0.0011)。

具体的に何が変わったの?

改善したもの:日常での腕の使いやすさ(MAL)

「Motor Activity Log(MAL)」という評価を使って、麻痺した腕を日常でどれくらい使えているかを計りました。これは「箸を持てるか」「ドアノブを回せるか」といった28の生活動作を本人が評価するものです。

60時間グループでは、3週間のリハビリで平均0.81ポイント改善し、これは日常生活の腕の使い方が「実感できるレベルで変わった」ことを意味します。

変わらなかったもの:検査室での運動能力(WMFT)

一方で、「Wolf Motor Function Test(WMFT)」という検査室での腕の動きを測る評価では、どのグループも差がありませんでした。

これは「検査室でできること(機能)」より「日常で実際に使えること(活動)」のほうが先に変化するということを示しています。これは理にかなっています。日常での使用が繰り返されることで、はじめて機能の変化も長期的に定着していくと考えられています。

どんなリハビリをしたの?

この研究では「ASAP(Accelerated Skill Acquisition Program)」という方法が使われました。特徴は以下のとおりです。

  • 患者さん自身が練習したい動作を選ぶ(「お茶を注ぎたい」「字を書きたい」など)
  • 反復回数よりも「質の高い動き」を重視する
  • 自宅や地域でも使えるスキルを意識する
  • やる気を引き出す工夫(自己効力感の向上)を含む

つまり、「ただ回数をこなす」のではなく、「本人の目標に合った、質の高い練習を積み重ねる」ことが大切だということです。

訪問リハビリで大切なこと

この研究の対象は外来(通院)でのリハビリでしたが、訪問リハビリにも大切な示唆があります。

リハりん(訪問PT・鍼灸)からのメッセージ 週1〜2回の訪問リハビリだけでは、研究の60時間に達するまでに時間がかかります。だからこそ、訪問時間だけでなく「毎日の自主練」「日常の中での腕の使い方の工夫」が回復を左右します。セラピストと一緒に、ご自宅でできる練習を具体的に組み立てていきましょう。

よくあるご質問

「慢性期(発症から1年以上)でも効果はある?」

はい。この研究の参加者の多くは発症から1年以上経過した方でした。慢性期でも、適切な量と質のリハビリで日常生活の改善が見込めることが示されています。

「60時間は多すぎない?」

3ヵ月で60時間は、週5時間(1日1時間×5日)のペースです。通院リハビリ+自主練の合算で考えると、現実的な目標値です。訪問リハビリの場合、週2回×1時間の訪問+毎日30分の自主練で、3ヵ月に25〜30時間程度確保できます。

「15時間や30時間でも意味がある?」

はい。15時間グループでも統計的に有意な改善が確認されています。「60時間でなければ意味がない」ということではありません。できる範囲で継続することが大切です。

まとめ

この研究が教えてくれることを一言でまとめると:

「リハビリは量が多いほど、日常での腕の使いやすさが改善する」

ただし大切なのは「ただこなす量」ではなく、「本人が使いたい動作を、質高く練習する時間」です。

ご不明な点や、ご自宅でのリハビリメニューについてのご相談は、いつでもリハりんまでお気軽にご連絡ください。

【参考文献】

Winstein C, Kim B, Kim S, Martinez C, Schweighofer N. Dosage Matters: A Randomized Controlled Trial of Rehabilitation Dose in the Chronic Phase after Stroke. bioRxiv 2018. doi:10.1101/441253

コメント

タイトルとURLをコピーしました