ご家族が知っておきたい「姿勢の崩れ」のこと
| 退院後、なんとなく体が傾いているように見える。椅子に座るといつも片側に寄ってしまう。立っているときにふらつく——。このような変化に気づいているご家族も多いのではないでしょうか。 これは「姿勢の崩れ」と呼ばれる脳卒中後によく見られる症状です。原因を知り、日常生活でできることを一緒に考えていきましょう。 |
① 体が傾くのは、本人のせいではありません
「もっと気をつけて座ればいいのに」「怠けているのかな」と感じたことはありませんか? 実は、体の傾きは脳のダメージによって起こる症状であり、本人が意識してもなかなか直せないことが多いのです。
脳が「まっすぐ」を間違えている
健康な状態では、脳が「重力に対して体がどこにあるか」を感知しています。脳卒中でこの感覚をつかさどる部分(頭頂葉・視床など)がダメージを受けると、実際には傾いているのに「まっすぐ立っている」と感じてしまいます。
| 研究でわかっていること2025年の研究(Frontiers in Neurology)では、脳卒中後に「傾いているのに気づかない」状態(プッシャー症候群)が発生する仕組みが詳しく解明されています。右脳の損傷で特に起こりやすく(約17%)、約90%の方は6か月以内に改善するとされています。ただし10〜15%の方では長期間続くことがあります。 |
「体幹の筋肉」も左右でバランスが崩れる
脳卒中後は、お腹や背中の筋肉(体幹の筋肉)が麻痺した側だけでなく、反対側も含めてバランスよく動かせなくなります。特に「左右に揺れる動き」でそのアンバランスが大きくなることが、最近の研究(Medicina, 2025)で示されています。
また、腰まわり・股関節の筋肉が弱くなることで骨盤が不安定になり、それが体幹の傾きにもつながっています。骨盤をしっかり支えると傾きが改善することも確認されており、「お腹の問題」よりも「腰・股関節の問題」として見ることが大切です。
② 姿勢の崩れを放っておくとどうなる?
姿勢の崩れは「見た目の問題」だけではありません。全身の回復に影響します。
| 転倒リスク | バランスが崩れることで、立ち上がり・歩行中の転倒リスクが高まります |
| 歩行の回復 | 体幹の安定は歩行の自立に直接関わります。早期に整えることで歩行回復が進みやすくなります |
| 日常生活全般 | 坐位バランスが整うほど、6か月後のADL(日常生活動作)が良好との研究報告があります |
| 手の使いやすさ | 体幹が安定することで、麻痺した手・腕の動かしやすさも改善します |
つまり、姿勢を整えることはすべての回復の「土台づくり」です。
③ リハビリではどんなことをするの?
体をひねる運動が特に大切
研究(Frontiers in Aging Neuroscience, 2023年・RCT)では、「腰をひねる動き(体幹回旋)」を中心としたトレーニングが、姿勢・バランス・歩行の改善に有効と示されています。日常生活でも「振り返る」「物を横に置く」など体をひねる場面は多く、早めに練習することが回復を助けます。
深い筋肉(インナーマッスル)を目覚めさせる
お腹の奥や腰の深いところにある筋肉(コア筋群)を鍛えることで、骨盤と体幹が安定します。2025年の研究(Neurological Sciences)では、このコアトレーニングにより姿勢・バランス・日常生活動作・QOLが改善することが確認されています。
「傾き」の感覚を目から学び直す
脳が「まっすぐ」を間違えているときは、鏡を使って目で確認しながら姿勢を修正する方法が効果的です。最近ではVR(仮想現実)を使ったリアルタイムフィードバックも注目されています。大切なのは「無理に直そうとする」のではなく、「目で見て学び直す」アプローチです。
声かけのコツ
| ❌ 「もっとまっすぐ座って!」 → 本人は感覚がずれているため、この声かけは伝わりにくく、本人を追い詰めることも。 ✅ 「鏡を見てみようか」「こっちに体重を乗せてみよう」 → 視覚や具体的な動作の指示の方が効果的です。 |
「傾き」に気づいたらメモしておく
「朝は比較的まっすぐ座れているのに、夕方は傾く」「疲れているときに特に崩れる」——こういった観察をメモしておくと、リハビリスタッフへの情報提供として非常に役立ちます。
⑤ 鍼灸とリハビリを組み合わせると?
脳卒中後の体幹の傾きには、筋肉の緊張(痙縮)が関与していることがあります。麻痺した側の体幹・股関節まわりの筋肉が固くなり、骨盤の動きを妨げているケースです。
鍼灸は、こうした筋緊張を和らげることで、リハビリで体を動かしやすくする「準備」を整える役割を担います。理学療法士と鍼灸師の両方の資格を持つセラピストが対応することで、運動療法と鍼灸を一体的に進めることが可能です。
まとめ
| 体の傾きは「脳の感覚のズレ」であり、本人の意識だけでは直せません体幹・骨盤・股関節へのリハビリが姿勢改善の土台になります椅子の高さ・足底接地など、環境を整えることも大きな効果がありますご家族の観察と声かけが、回復を大きく後押しします鍼灸との組み合わせで、より動きやすい体をつくることができます |
姿勢の改善は「時間がかかる」ように見えて、環境や声かけを変えるだけで翌日から変化が出ることもあります。一人で抱え込まずに、訪問リハビリスタッフと一緒に取り組みましょう。
リハりん|北区赤羽 訪問リハビリ・鍼灸 riharin.kk@gmail.com
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